オンデマンド生産と法的留意点

SUZURIや、PIXIVFACTORYなど、自分の作品を手軽にGOODS販売できるサービスが拡がっています。

また、ユニクロのオリジナルUTサービスUTmeなど、大手企業もインターネットを介したオリジナル商品サービスを行なっています。

オンデマンド型生産の新しい類型のライセンスビジネスという捉え方

これらのサービスは、自ら商品を設定販売することから自分で商品を販売しているような感覚になります。

しかし、実態は新しいタイプのライセンスビジネス、とも評価できると考えています。

ここでいうライセンス、とは、例えばクリエイターの持つ著作権などの知的財産権を第三者に利用許諾することを指します。

つまり、運営社の行うグッズ販売ビジネスに、イラストや写真などの画像など(正確には画像などを客体に成立する著作権や商標権など知的財産権)について、ライセンサー(権利者)が自ら画面操作をして利用を許諾し、販売された場合利用許諾料として利益の一部を得ている、というのが実態に近いと考えられます。

このビジネスの新しいところは、ライセンシー(運営社)が包括的に利用許諾の意思を表示し、ライセンサーのライセンスする知的財産や知的財産権の内容を全くチェックしないという点です。

通常、ライセンシー(この文脈では運営社)はライセンスに多大な利害関係を持つため、ライセンスを受ける知的財産やこれを客体に成立した知的財産権の内容を入念に確認します。

しかし、このタイプのビジネスは、ライセンシーがライセンスする知的財産権について完全にライセンサーの意思と選択に委ね、ライセンシーは許諾を受ける時点で、その内容さえ事前にはチェックしません。事後的に第三者の権利を侵害する場合は、受けた許諾を解消するなど事後的な対応を原則としています。これは、これまでのラインセンスビジネスではあまりみられなかった形態と考えられます。

なぜ、そんなことが可能になるのでしょうか。これは、インターネットによる商品の仮想化によって、ライセンシーが負うリスクが極限まで低減されているからではないかと考えられます。

つまり、商品を仮想化し、実際に販売できた物だけ実際に商品として作成して売るため、ライセンシーにおいてどのような知的財産でも、売れたものだけを販売できるためにその内容を確認しなくても経済的なリスクは負わない、という状況があります。このような状況から実現したビジネス形態であると理解されます。

また、デジタル技術の発達により、データさえあれば鋳型などの経済的、物理的コストなく、たったひとつの商品だけでも容易にプリントできるグッズ制作体制が構築されているものと考えられます。

このことが、ライセンスを完全にライセンサーの意思に委ね、ライセンシーは事前チェックさえ行わないという新しいタイプのライセンスビジネスを生み出している、とも評し得るのではないでしょうか。

このように、GOODS販売委託サービスを利用する際は、自ら商品を販売しているのではなく、実態は新しいタイプのライセンスビジネスであるという可能性も念頭において、そのライセンス関連規約を吟味する方が妥当な面もありそうです。

ビジネスの形態に関わらず、ライセンスする内容をきちんと吟味するのは重要ですね。わからなければ専門家に相談する選択もあります!

オンデマンド生産サービス「SUZURI」の知的財産権に関する利用規約

オンデマンドGOODS生産の草分け的サービスであるSUZURIに関する利用規約のうち知的財産権に関する条項は、下記リンク先に解説記事を作成していますのでご参照ください。

ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)特にユーザーデザイン型のオンデマンド生産について

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)がTHE INVENTION (ザインベンション) 発明(発明推進協会)令和3年6月号に寄稿した『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)特にユーザーデザイン型のオンデマンド生産について』当ウェブサイト上で公開していますので、興味のある方はご参照ください。

オンデマンド生産に関する記事

オンデマンド生産に関連した記事は下記リンク先からご確認ください。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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