ソフトバンク/SoftBankに対する発信者情報開示

携帯電話キャリアであるソフトバンク/SoftBankに対する発信者情報開示について情報を記載しています。

携帯電話キャリアの位置づけ

携帯電話キャリアは、インターネットサービスプロバイダとして携帯電話、スマートフォンからのインターネットアクセスを供給します。この時、IPアドレスなどの通信元を識別するための論理値を発行するため、IPアドレスとタイム・スタンプなどから携帯電話の契約者の氏名住所などを特定し、ひいては発信者を特定できる可能性があります。

SoftBank(ソフトバンク)の発信者情報開示に対する対応

SoftBank(ソフトバンク)は、基本的に発信者情報開示に対して協力的な対応をしていません。

SoftBank(ソフトバンク)に対しては、原則的に訴訟などの法的対応が必要になることが多い印象です。実際にも、SoftBank(ソフトバンク)に対する発信者情報開示を求める裁判例は散見されます。

SoftBank(ソフトバンク)とTwitter、Instagramなど米国SNSからの開示

SoftBank(ソフトバンク)は、現在接続先IPアドレスについてコンテンツプロバイダから開示された情報がない限りアクセスログの調査自体しないという態度をとっています。ドコモやKDDIなどの他の携帯電話キャリアについては情報を開示しない場合も一定期間の情報保全措置は任意でしてくれます。この様に他の携帯キャリアと比べても被害者にフレンドリーでない対応を採用していると思われます。プロバイダの社会的責任の大きさを考えると、個人的には問題のある調査態度であると考えています。

いずれにせよ、SoftBank(ソフトバンク)は、コンテンツプロバイダから開示された接続先IPアドレスがない場合、消去禁止仮処分などの手続き内で裁判所からの調査指示がない限り、アクセスログの調査も保全もしません。しかし一方でTwitterやInstagramなどの海外SNSコンテンツプロバイダは接続先IPアドレスの情報自体取得しておらず開示には応じません。

そうすると、米国SNSなどの場合、SoftBank(ソフトバンク)がアクセスログの調査自体をするのが消去禁止仮処分を申し立てて裁判所から調査の指示があったタイミングが最速ということになります。

したがって、米国SNSの場合、米国SNSから仮処分命令によって開示を受けた後、消去禁止の仮処分申立後、最初の審尋期日指定までを3ヶ月以内に収めないといけないことになります。とても厳しい時間制限となりますので、米国SNS上の権利侵害についてはなるべく迅速にご相談いただくことをお勧めいたします。

発信者情報開示請求の請求先

SoftBank(ソフトバンク)は、発信者情報開示の請求先を下記のとおり公表しています。訴状などの郵送先住所とは異なりますので、ご注意ください。

https://www.softbank.jp/corp/aboutus/public/provider/

発信者情報開示請求等の送付先

住所 〒135-0061
東京都江東区豊洲5-6-52 NBF豊洲キャナルフロント
ソフトバンク株式会社 お客様相談室 インターネットセキュリティチーム 宛

SoftBank(ソフトバンク)に対する発信者情報開示請求訴訟を棄却した裁判例

令和 2年 2月20日東京地裁判決(令和元年(ワ)14446号発信者情報開示請求事件)は、インスタグラムにおけるログインの際の、令和 2年 2月25日東京地裁判決(令和元年(ワ)19689号発信者情報開示請求事件)は、ツイッターにおけるログインの際のソフトバンクを経由したインターネット通信における発信者情報の開示が問題となった事案です。

各事案においてソフトバンク側は、投稿から時間的に離れたログインの際に送信された情報と紐づく契約者情報について発信者情報に当たらないと指摘し、裁判所もこれを認めて請求を棄却しています。

このように、ソフトバンク側は訴訟においても法的な疑義については的確な反論をし、強く争ってくる様な対応が裁判例上も見受けられます。

知的財産高等裁判所令和3年2月4日判決・裁判所ウェブサイト掲載

知的財産高等裁判所令和3年2月4日判決・裁判所ウェブサイト掲載は、上記令和 2年 2月25日東京地裁判決(令和元年(ワ)19689号発信者情報開示請求事件)の控訴審判決です。下記のとおり述べて控訴を棄却しました。

1 争点2-1(本件発信者情報1は,法4条1項の「当該権利の侵害に係る発 信者情報」に該当するか)について

⑴ア(ア) 法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,侵害情報の流通によって当該開示の請求をす る者の権利が侵害されたことが明らかであるときで,かつ当該発信者情 報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のため必要である 場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるときに限り, 当該特定電気通信の用に供される特定電気通信役務提供者(開示役務提 供者)に対し,その保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名, 住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で 定めるものをいう。)の開示を請求することができる旨定め,これを受け て省令は,「発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称」(1 号),「発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所」(2号)が開示対象 になるものと規定している。これは,文言上,侵害情報の発信者その他 侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称,住所を開示対象とする趣旨と 解される。 また,法2条4号によれば,「発信者」とは,「特定電気通信役務提供 者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情 報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特 定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の 者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。」と定義され ている。そこで,本件においても,上記のように記録媒体に侵害情報を 記録し,又は送信装置に侵害情報を入力した者に関する情報が開示対象 となることになるが,侵害情報の記録又は送信装置への入力という意味 合いにおいて,侵害情報の送信に当たる行為は,本件投稿行為であると いうほかない。 控訴人は,本件投稿行為のほか,ユーザ名Aの紹介ページにおいて, 最終ログインの直近の本件投稿動画の再生の時点において控訴人動画 及び控訴人画像の公衆送信権の侵害行為があり,最終ログインの直近の 本件サムネイル画像1又は2の表示の時点において控訴人画像の氏名 表示権侵害行為及び同一性保持権の侵害があったとして,これらの再生 ないし表示をもって,侵害情報の送信であると主張する。しかし,これ らの再生ないし表示の時点で,特定電気通信設備の記録媒体への情報の 記録又は特定電気通信設備の送信装置への情報の入力があるわけでは なく,これらの再生ないし表示を省令が1号に定める侵害情報の送信と いうことはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 また,控訴人は,本件サイトの管理画面にログインすることができる 者が,紹介ページで表示されるサムネイル画像を選択し,その結果紹介 ページで氏名表示権や同一性保持権の侵害が生じたと主張するが,この ような主張も権利侵害行為と侵害情報の送信に当たる行為を混同する ものというべきであり,本件投稿行為とは別の機会にサムネイル画像の 選択行為が存在することを認めるに足りる証拠はないし,仮に,そのよ うな選択行為が存在したとしても,以下に判示する理由が同様に当ては まるから,結論に影響を与えるものではない。

(イ) 本件発信者情報1は,侵害情報の送信である本件投稿行為そのもの の発信者情報ではないから,法4条1項の定める開示対象とはいえない。 仮に,侵害情報の送信そのものでなく,その準備行為等,これと密接 に関係するログインに係る発信者情報も,法4条1項の定める開示対象 になると解したとしても,本件発信者情報1は,本件投稿行為の後約1 年8か月も経過した後の最終ログインに係るものであって,侵害情報の 送信の準備行為とはいえないことはもちろん,本件投稿行為との関連も 極めて希薄なものというべきであるから,結局,本件発信者情報1が, 法4条1項の定める開示対象であるとはいえない。

イ 控訴人は,仮に,本件発信者情報1が侵害情報の送信である本件投稿行 為に関する発信者情報ではないとしても,最終ログイン者が本件投稿行為 をした者であることが認められ,ないしはそのように評価されると主張す る。しかし,以下のとおり,本件において最終ログイン者が本件投稿行為 をしたと認め,又はそのように評価することはできない。

(ア) 本件サイトでユーザ名やパスワードが共有される可能性は否定でき ず,このことは本件サイトがアダルトサイトであるからといって排除さ れるものではないし,また,利用規約も遵守されるとは限らないこと, 5 本件投稿行為から最終ログインまで約1年8か月を経過していること からすると,本件投稿行為をした者と,最終ログイン者の本件サイトに おけるユーザ名やパスワードが共通であったとしても,両者が同一とは 直ちにはいえない。控訴人は,本件サイトの他のユーザが他者にユーザ 名又はパスワードを使用させたことがないと述べている旨主張するが, わずか2例にすぎず(甲17,18),これを一般化することはできない。

(イ) 本件サイトでは6か月分しかログを保有しないので(甲3),本件投 稿行為から約1年8か月後の最終ログインまで,最終ログインの際に用 いられたIPアドレス以外のIPアドレスがユーザ名Aとして本件サ イトにログインしていないかどうかは不明である。

(ウ) 令和元年5月17日付けの控訴人の開示請求(甲5)に対し,被控訴 人は,遅くとも同年6月18日までに最終ログインに係るIPアドレス を付与された契約者に法4条2項に係る意見照会をした(甲6)が,そ の後である令和2年4月10日現在,本件サイトで,本件投稿動画があ ったURLにアクセスしようとすると,エラー表示がされるようになっている(甲19)ことが認められる。しかし,エラー表示の原因が最終 ログイン者による削除であるか否かは明らかでなく,また,仮にそうで あったとしても,そのことから直ちに,最終ログイン者が本件投稿行為 をした者であると推認することはできない。

(エ) 控訴人の主張するとおり,本件投稿動画の平成29年9月6日の時点での再生回数が4757回,平成30年10月18日の時点での再生 回数が5500回と認められるとしても,そもそもこのような再生をし た者(仮に,最終ログイン日もしくはそれに極めて近い日に本件動画を 再生した者がいるとすればその者も含む。)と最終ログイン者,さらには 本件投稿行為をした者の同一性を推認させる事情は何ら明らかにされて いない。

ウ 控訴人は,最終ログイン者は,仮に物理的に自動公衆送信装置の公衆送 信用記録媒体に本件投稿動画を記録した者でなかったとしても,当該記録 を記録媒体から削除せずに保持し続け,意見照会後は削除しているのであ るから,受信者からの求めに応じて自動的に情報を送信することができる 状態を作り出す状態を維持したものであり,①送信可能化権侵害の主体で ある,②本件投稿行為者との共同不法行為者に当たる,③本件投稿行為者 を幇助したものであると評価することができると主張する。 しかし,記録媒体から削除せずに保持し続けた行為をもって,送信行為 と同視することはそもそもできないし,最終ログイン者と本件投稿者との 関係を具体的に明らかにする証拠はなく,最終ログイン自体は時期的にみ ても本件投稿行為との直接的関連が認められない以上,控訴人の主張は採 用できない。

エ 控訴人は,法4条1項の開示対象である「氏名,住所その他の侵害情報 の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの」とは,発信 者を特定(識別)するために参考となる情報一般を意味すると主張する。 しかし,そのような解釈は,侵害情報の発信者の特定に資する情報一般 を開示の対象とするのでなく,特定電気通信(法2条1号)による情報の 流通によって権利侵害を受けた者について加害者の特定を可能にして被 害者の権利の救済を図るという要請と,情報の発信者のプライバシー,表 現の自由,通信の秘密の保護の要請の双方に配慮し,開示を定める情報を 限定的に列挙した法4条1項,省令の趣旨に反するもので,採用すること ができない。

⑵ 小括 以上によれば,本件発信者情報1は,法4条1項の「当該権利の侵害に係 る発信者情報」に当たるとはいえない。

2 争点2-2(本件発信者情報2又は同3は,法4条1項の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか)について

本件発信者情報2及び同3は,本件IPアドレスを本件投稿行為が行われた 日時頃に割り当てられていた者の氏名又は名称及び住所であるが,そもそも, 本件IPアドレスが,平成31年4月28日午後0時00分34秒(協定世界 時)と,本件投稿行為が行われた平成29年8月23日午前3時38分(協定 世界時)に,同一人物に割り当てられていたと認めるに足りる証拠はない(な お,本件において最終ログイン者が本件投稿行為をしたと認め,又はそのよう に評価することはできないから,最終ログイン時に割り当てられた本件IPア ドレスが本件投稿行為に用いられたIPアドレスであると推認できないこと については,前記1(1)イのとおりである。)。以上によれば,本件発信者情報2及び同3は,法4条1項の「当該権利の侵 害に係る発信者情報」に当たるとはいえない。

知的財産高等裁判所令和3年2月4日判決・裁判所ウェブサイト掲載

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)の発信者情報開示及び削除請求業務

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、携帯電話キャリアに対する発信者情報開示の取り扱い実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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    弁護士齋藤理央

    東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
    【経 歴】

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    大阪府豊中市出身

    早稲田大学教育学部卒業

    大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

    2010年    東京弁護士会登録(第63期)

    2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

    2021年    弁理士実務修習修了

    2022年    今井関口法律事務所参画

    【著 作】

    『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

    『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

    『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

    『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

    『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

    『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

    『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

    【セミナー・研修等】

    『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

    『リツイート事件最高裁判決について』

    『BL同人誌事件判決』

    『インターネットと著作権』

    『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

    『著作権と表現の自由について』

    【主な取扱分野】

    ◆著作権法・著作権訴訟

    ◆インターネット法

    ◆知的財産権法

    ◆損害賠償

    ◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

    【主な担当事件】

    『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

    『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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