インラインリンクに代表される画像の統合表示に著作権法28条を介して著作権が直接及ぶ場合

リーチサイト規制の議論とリンクと著作権の問題

文化庁が令和元年10月30日(末日の31日ではなく前日の30日までの募集のようです。)までダウンロード違法化のパブリックコメントを募集しています。今回のパブリックコメント募集は、ダウンロード違法化のみならずリーチサイト規制についても質問を設けています。今年3月に公開されたリーク情報を参照する限りリーチサイト規制はリンクに明文で法規制を及ぼすものとなる予定だったようです。

リーチサイト規制についてもダウンロード規制拡大とあわせて、10月末までに少しでも議論が進むことが期待されます。

このような状況に鑑みて、リンクと著作権の議論について、自身の最新の理解を複数回の記事でご紹介したいと思います。

今回は、リンクと混同されることも多い、インラインリンクの問題について、情報発信したいと思います。

インラインリンクとリンク規制の議論

インラインリンクを、そもそもリンクの一内容として整理するかどうかは、大きな問題です。

私見としては、インラインリンクはたまたまリンクを課題解決の手段として選択した、画像の埋め込み表示技術と捉えるべきと考えています。

つまり、画像の統合表示技術のうち、実現手段としてリンクを選択したもの、言い変えれば画像の統合表示技術の1種類に過ぎない、という位置づけに思われます。

https://con10ts.com/2018/06/17/%e3%83%aa%e3%83%84%e3%82%a4%e3%83%bc%e3%83%88%e4%ba%8b%e4%bb%b6%e6%8e%a7%e8%a8%b4%e5%af%a9%e5%88%a4%e6%b1%ba%e3%81%a8%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%90%e3%82%a4%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%82%b0%ef%bc%88%e5%b9%b3/

つまり、インラインリンクはリンクとは別の、リンクを基幹技術として選択することもできる別の目的をもった画像の統合表示技術と理解されます。このうちリンクを選択したものがインラインリンク、という理解です。

この意味でリンクを用いた場合の画像統合に著作権侵害が成立するか否かは、リンクと著作権の問題と直接的に強い関わりがない部分と考えています。

ただし、画像統合表示技術のうち、インラインリンクは代表的なものとは言えると思います。あるいはもっとも広く利用されているもののひとつであることは間違いがないと思われます。

そうするとリンクを念頭においたリーチサイト規制の問題についてインラインリンクはその基幹技術にリンクを用いている点からリーチサイト規制の影響を受けるものの、特にインラインリンクに代表される画像の統合表示について現行法上法規制が及ぶか否かという論点について、リーチサイト規制の議論に直接的な強い影響はないものと考えられます。

インラインリンクをリンクの一内容(リンク技術の応用の一場面)と位置付けるとしても、インラインリンク特有の議論が、リンク一般の法規制の問題になぜ大きな強い影響を及ぼさないと考えるか今回の投稿では、自身の理解を述べたいと思います。

まず、前提としてインラインリンクについて現行法でも著作権の保護が直接及ぶ一定の場合があると考えられます。この場面がリンクではなく画像の統合表示に特有の論点であることが、リンク一般に議論が波及しない最大の原因と理解しています。

さらに、インラインリンクに代表される画像の統合表示について著作権侵害が著作権法28条を介して直接成立する場合と、成立するか否か明かでないものの成立する可能性があり議論が必要な場合に分かれ、このエントリでは、まずは、2次的著作物の成立を介して著作権法28条によりインラインリンクなどの画像の統合表示の場面に直接著作権が及ぶ場合を論じたいと思います。

インラインリンクに代表される画像の統合表示と2次的著作物の成立

インラインリンクなどの画像の統合表示技術に、著作権が直接及ぶ場合として、例えばインラインリンクによってリンクを貼っているウェブページが、被リンク著作物の2次的著作物として成立する場面が考えられます。

つまり、被リンク著作物にリンクしたリンク先ウェブページが、インラインリンクによって被リンク著作物の表現上の本質的特徴を残しつつ、新たな創作性を獲得し新たな著作物(2次的著作物)として成立する場面です。

手前味噌で恐縮ですが、リンク先の表現(スマートフォンは横向き推奨です。)のようにインラインリンクで被リンクを張られた画像データ(人、浮遊島及び背景画像のイラスト3点)の合成とアニメーション表現及び雪のエフェクトを全て結合的に表現したウェブページは、各被リンクされた画像各3点に対して新たな創作的表現を付加していると評価する余地がありそうです。

そうであるなら、インラインリンクを張っているリンク先ウェブページは、各被リンク著作物(人、浮遊島及び背景画像のイラスト3点)の2次的著作物して成立する場合がある、ということになります。

さらに例示をするのであれば、例えばインターネット配信されるゲームが例に挙げられると考えています。

このとき、配信される個々の画像データと、画像データが組み合わされたゲームは、原著作物と2次的著作物の関係に立つと考えられます。ただし、この場合画像データをゲーム表現に統合するのに用いられるのは、HTMLを利用したインラインリンクではなく、ゲームエンジン(ゲーム開発ツール)において、C言語等で記述された画像呼び出しのためのコード、ということになります。

仮にインラインリンクやその他の方法で統合された著作物について2次的著作物が成立する場合、2次著作物であるウェブページやインターネット配信ゲームに対しても、被リンク著作物の複製権、公衆送信権が独立して著作権法28条を介して直接及ぶことになると考えられます。

つまり、ウェブページの著作者と被リンクされた画像の著作者が異なる場合、ウェブページのアップロード及びウェブページの送信には、ウェブページの著作者の複製権、公衆送信権に加えて、被リンク画像の著作者の28条を介して及ぶ複製権及び公衆送信権が独立して及ぶことになる、と言えそうです。

このように、インラインリンクによってリンク先ウェブページが被リンク著作物の2次的著作物として成立する場合、著作権法28条により著作権が直接及ぶ場面も想定されます。

反面、ハイパーリンクによって、被リンク著作物の2次的著作物が成立することは無いため、インラインリンクに代表される画像統合技術による2次的著作物成立の問題がハイパーリンクに及ぼす影響は、直ちには考えにくいところです。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

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◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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