インフォメーション

コンテンツの資金調達(コンテンツ・ファンディング)

コンテンツファンディングの法的スキーム

製作委員会方式

日本においてよく利用されている契約方式です。出資者が組合契約(任意組合・匿名組合など)を結びます。利益の配分についても取り決めるため本来的に金融商品取引法の対象となりますが、立法的に規制外とされています。金融商品取引法の規制を受けないためにも法令の要求にしたがった合意を形成する必要があります。詳しくはお問い合わせください。

製作員会方式は近年多くみられるエンターテイメントコンテンツ製作のためのスキームです。
法的には,民法上の組合契約が締結されることが一般的です。

複数の企業が出資者となり、出資者が複数であるという限りでリスクが分担されますが、負債を負った場合の責任は無限責任であり、負債は出資者がすべて返済する義務を負います。

組合契約は、当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することで成立します(民法667条1項)。

出資した財産を含めて、組合の財産は、総組合員の共有とされます(民法668条)。もっとも、組合を清算するまで組合財産の分割を請求することが出来ない(民法676条2項)など、制限も存在します。

組合は法人格を有しませんが、訴訟の当事者となることは認められると解されています(民事訴訟法29条)。

組合は、契約なので成立が容易であり、事業の成功などとともに終了する(民法682条)ため、清算も簡易です。

反面、組合員が無限責任を負うことや、法人格がないため各組合員で権利・財産が共有されることなど、問題点もあります。

組合以外の法的な構成として考えられるもの

特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)、有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律第2条、同3条)、投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律)等信託契約、会社法に基づく株式会社等の設立、その他。

民法上の組合契約

コンテンツのためのファンディング(資金調達)において、広く利用されているのが、製作委員会方式です。製作委員会方式は,法的には民法上の任意組合であることが多いと考えられています。もっとも,商法上の匿名組合(商法535条~),有限責任事業組合(有限責任事業組合契約に関する法律2条)など,民法上の任意組合から一歩進めて,出資財産を営業者に帰属させたり,組合員の責任を有限としたりすることなども考えられます。民法上の任意組合契約のメリットは税制上のパススルー課税であったり,組成が簡易な点であったりします。反面、デメリットとしては、法人格が付与されない(権利の一元化が困難であること)があげられます。

有限責任事業組合(LLP)

主として,民法上の任意組合契約における組合員の無限責任というデメリットをクリアするために使われる事業体です。有限責任事業組合契約に関する法律に法的根拠が求められ,同法による規律を受けます。

匿名組合契約

商法に根拠がある組合契約で,民法上の任意組合契約とは大きく性質を異にします。営業者が1人定められ,組合契約は営業者と出資者の個別契約とされます。したがって,出資者には脱退という概念がなく,認められているのは契約の解除権になります(商法540条)。出資者は営業からは分離され,営業上の権利義務を負担しないことになります(商法536条4項)。

特定目的会社(TMK)

次に,著作権などの権利の一元化のために,営業を行う主体に法人格を持たせることが考えられます。特に一つのコンテンツ事業に特化した法人格を付与するときに設立を考慮されるべき一つのスキームが特定目的会社(資産の流動化に関する法律2条3項)です。特定目的会社(TMK)は,特別目的事業体(SPV)及び特別目的事業体に包含される概念である特別目的会社(SPC)の一形態で,コンテンツファンディングにおいては,一のコンテンツ事業を営むという特定の目的達成のために設立されることになります。パススルー課税は原則的に適用されませんが税制上の優遇措置があります。

合同会社(LLC)

LLPと起源を一にしますが,法人格が付与され反面パススルー課税により2重課税を防ぐことは原則的にできません。株式会社よりは組成コストが低く設立は容易ですが,法人格を得ることは可能です。反面導入されて新しい制度であり事業体として株式会社ほど社会的信用を得られていないのが現状です。

株式会社

もっとも広く利用されている会社組織で、会社法にその設立の根拠規定があります。特定のコンテンツ事業のために株式会社が設立されるケースも少ないながら見られます。

売買予約乃至は停止条件付き売買契約

小規模な事業者や個人クリエイターが購買型のクラウドファンディングなどでコンテンツ事業の資金を調達する場合,事業者個人と出資者を規律する法律構成として検討することが出来るスキームです。一定額の出資が集まることを条件に,既出の出資を寄託乃至貸借とし,出資が一定額に達した段階でクリエイター乃至事業者から売買を完結する意思を表示(民法556条1項)するか或いは,停止条件の成就により売買契約が成立(民法127条1項)するという構成です。事業者やクリエイターは需要が一定程度あることを確認したうえで、代金の前払いを受けることができます。

出資契約

返還合意のない資金の出資を契約します。

会社・法人設立

出資の一形態ともいえますが、コンテンツのために会社法人を設立し資金を会社に帰属させます。

消費貸借契約

銀行融資など、コンテンツの製作資金を借り入れによって調達します。

クラウドファンディング

世間一般から資金を調達するインターネット時代の新しいスキームです。

クラウドファンディングは、インターネット等をとおした不特定多数の個人からのファンディング(=資金調達)を指します。

資金を投資、出資した人への見返りがない寄付に近い形のものや、金銭的見返りを吸引力にする投資型のクラウドファンディング、グッズや特典を見返りにする購入・販売に近い形態のファンディングなど、その方法は様々です。

また、エンターテイメントコンテンツに関わらず、さまざまな分野で利用が期待される、近年注目が高まっているファンディング(=資金調達)と言えます。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事一覧

弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

お問い合わせ

    TOP