送信可能化権における情報の範囲

著作権法は、公衆送信権について、下記の条文をおいています。

著作権法23条

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

すなわち、著作権法23条は、公衆送信権について、上記のように定め、この条文を、送信可能化権にフォーカスすると、次のように読み替えることが出来ます。

 著作権法23条の送信可能化権にフォーカスした読み替え

著作者は、その著作物について、自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を行う権利を専有する。

このように、著作(権)者は、著作物について送信可能化する権利を専有します。つまり、著作権者以外の送信可能化は原則的に禁止されることになります。
この送信可能化行為は、著作権法2条1項9の5号イ及びロで、次のとおり定義されています。

九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号及び第四十七条の五第一項第一号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

つまり、送信可能化権とは、自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録する行為などをさします。これを、適用して、さらに、条文を読み替えます。

 著作権法23条に簡易化した送信可能化権の定義を挿入した読み替え

著作者は、その著作物について、自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録する権利を専有する。

このように、送信可能化権を単純化していくと、「その著作物について、自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録する」等の行為を指していることが理解されます。そして、ここで、送信可能化権について禁止されている行為は、サーバーに情報を記録等する行為ではなく、「その著作物について」情報を記録等する行為だということです。

このように、「その著作物について」情報を記録する行為といえるか否かで、送信可能化権侵害の侵害の成否が決定することになります。しかし、ウェブサイトで複雑に連動するプログラムにおいて、どこまでが「その著作物について」情報を記録する行為と評価されるべきか、一義的に答えが出るとは思えない側面もあります。この点は、判例の集積が待たれるところではないでしょうか。

 

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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