AUを運営するKDDI(ケーディーディーアイ)に対する発信者情報開示

携帯電話キャリアであるAU(エーユー)を運用するKDDI(ケーディーディーアイ)株式会社に対する発信者情報開示について、情報を記載しています。

携帯電話キャリアの位置づけ

携帯電話キャリアは、インターネットサービスプロバイダとして携帯電話、スマートフォンからのインターネットアクセスを供給します。この時、IPアドレスなどの通信元を識別するための論理値を発行するため、IPアドレスとタイムスタンプから発信者を特定できる場合があります。

また、KDDIは、AU光などインターネット接続サービスも提供しています。したがって、インターネット接続サービスとして発信者情報開示を請求する場合もあります。

KDDIの発信者情報開示に対する対応

KDDIは発信者に対して意見照会をした上で、その回答を見て発信者情報開示を行うか決定します。開示に明確な同意がない限り、任意に情報を開示しない例が多いようです。そのため、KDDIを被告とする発信者情報開示訴訟例は多く存在します。

裁判例で認定されたKDDIの発信者情報開示に対する対応の実際

令和 2年 2月19日東京地裁民事29部判決(平31(ワ)9347号発信者情報開示請求事件 裁判所ウェブサイトhttps://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89501)は、KDDIに対する発信者情報開示が申し立てられた事案です。

同事案の中で、KDDIの発信者情報開示に対する対応が詳細に言及されています。

すなわち、「原告訴訟代理人は,本件訴訟提起前の平成31年3月7日付けで,被告に対し,本件IPアドレスを被告が管理する特定電気通信設備等と,本件写真を侵害された情報とをそれぞれ特定した上で,本件投稿により原告の著作権(公衆送信権)が侵害されており,本件投稿の直前の本件ログインをした者に係る情報が本件投稿に使用された発信者情報であるとして,本件発信者情報の開示を請求した(甲17)」として、まず、原告訴訟代理人より任意の発信者情報開示請求がなされていることに言及されています。

これに対して、KDDIたる「被告は,前記イの請求を受け,本件契約者に対し,法4条2項に基づく意見照会をした。被告が本件契約者に対して送付した上記意見照会書には,①法4条2項に基づき被告が開示請求に応じることについて契約者の意見を照会するものであること,②開示に同意しない場合にはその理由を回答書に具体的に記載してもらいたいこと,③権利を侵害したとされる情報を契約者が発信していなくても,実際にはインターネット接続を共用している家族や友人が発信している場合があるため,その場合には同人らの意見を照会したいこと,④発信者情報開示請求に関係する発信元情報,掲載された情報,掲載先のURL,侵害情報等が記載されている」とされ、上記の内容の照会を行っていることが伺われます。

また,同裁判例によると、KDDIたる「被告が併せて送付した回答書書式には,住所,氏名及び連絡先を記載する欄が設けられ,「貴社より 年 月 日付で照会のあった私の発信者情報の取扱いについては,下記のとおり回答します。」と印字された上で,発信者情報開示に同意するか否かを選択する回答欄及び同意しない場合にはその理由を記載する欄が設けられ,理由欄に記載された内容が相手方に対して開示を拒否する理由となるため回答を詳細に記載することを求める注記が付されている。また,発信者が契約者ではなく家族や同居人である場合に用いる回答書書式も併せて送付されているが,同書式には,発信者の住所,氏名及び連絡先を記載する欄が設けられ,「発信者情報の開示請求者がその流通により権利を侵害されたと主張する情報は,貴社から照会( 年 月 日付)をした契約者ではなく,私が発信した情報ですので,私の発信者情報の取扱いについて,以下のとおり回答します。」と印字された上で,発信者情報開示に同意しないか又は発信者情報開示請求者と直接連絡を取るため契約者の情報に代え,回答者の住所,氏名及び連絡先を通知することを求めるかを選択する回答欄及び同意しない場合にはその理由を記載する欄が設けられ,理由欄に記載された内容が相手方に対して開示を拒否する理由となるため回答を詳細に記載することを求める旨の注記が付されている(乙9)」とのことが明らかにされています。

その上で、KDDIたる「被告は,前記ウの意見照会に対する回答書を受領した上で,平成31年4月4日頃,原告代理人に対し,同人から連絡のあった情報により権利が侵害されたことが明らかであると判断できないことを理由に,前記イの開示請求に応じることはできない旨を通知し」ているため、KDDIは意見照会の結果開示に応じないことがあるとわかります。

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)のKDDIに対する発信者情報開示請求訴訟担当裁判例

令和2年9月25日東京地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載は、弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)が担当したKDDIに対する発信者情報開示請求訴訟の裁判例です。

写真の著作物性や、引用の成否が争点となりましたが、裁判所は発信者情報の開示を命じる判決を下しています。

KDDIに対する発信者情報開示の実際

以上から、まずは任意で発信者情報開示を行い、その上で開示を受けられない場合、氏名や住所などの発信者情報の開示を求めて、訴訟を提起することになります。

KDDIに対する任意の発信者情報開示請求

KDDIは、発信者情報開示の書式を公開しています。

書式に必要書類を添付して、下記のKDDIが公表している宛先住所に郵送します。

KDDIが公開している住所

〒163-8509 東京都新宿区西新宿2丁目3-2 26F
KDDIお客さまセンター ネットセキュリティ担当

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)の発信者情報開示及び削除請求業務

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、KDDIを含めた携帯電話キャリアに対する発信者情報開示の取り扱い実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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    弁護士齋藤理央

    東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
    【経 歴】

    写真(齋藤先生)_edited.jpg

    大阪府豊中市出身

    早稲田大学教育学部卒業

    大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

    2010年    東京弁護士会登録(第63期)

    2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

    2021年    弁理士実務修習修了

    2022年    今井関口法律事務所参画

    【著 作】

    『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

    『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

    『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

    『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

    『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

    『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

    『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

    【セミナー・研修等】

    『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

    『リツイート事件最高裁判決について』

    『BL同人誌事件判決』

    『インターネットと著作権』

    『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

    『著作権と表現の自由について』

    【主な取扱分野】

    ◆著作権法・著作権訴訟

    ◆インターネット法

    ◆知的財産権法

    ◆損害賠償

    ◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

    【主な担当事件】

    『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

    『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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