行政・公法

義務付け訴訟

行政庁に一定の処分・裁決をすべきことを命じることを求める訴訟を、義務付け訴訟と言います。本項では義務付け訴訟について概観しています。

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    ①義務付け訴訟

    行政庁に一定の処分・裁決をすべきことを命じることを求める訴訟を、義務付け訴訟といいます。

    ①-①義務付け訴訟の類型

    義務付け訴訟は、申請を前提としない、非申請型と、申請に基づく一定の処分を求める、申請型があります。申請型には、不作為に対して応答を求める不作為型と、申請に対する違法な応答の是正を求める拒否処分型があります。

    ①-②義務付け訴訟の法的構成

    義務付け訴訟を給付訴訟と構成し、一定の行政処分を求める実体法上の請求権を実現するものとして構成することも考えられました(請求権構成)。しかし、行政事件訴訟法は、義務付け訴訟を明定し、形成訴訟という司法判断を経て、行政庁に一定の義務が発生する制度構成を採用しました(訴訟類型構成)。

    ①-③処分の一定性

    義務付け訴訟は一定の処分を求めるが、求めるべき処分をどの程度まで特定すべきかが問題となります。この点、いたづらに厳格に特定性を要求すれば原告の負担が過大となり訴訟手続きが利用しづらくなってしまいます。そこで、裁判所が審判を求めている処分を、他の行政処分と区別できる程度に特定されていれば足るものと解すべきです。

    ②非申請型義務付け訴訟

    申請に基づかない直接型の義務付け訴訟です。

    ②-①訴訟要件

    非申請型の義務付け訴訟が本案審理されるための要件です。

    ②-①-①重大な損害

    非申請型の義務付け訴訟が認められるために、処分がされないことにより重大な損害を被ることが要件とされます。形式的な厳格さを求める趣旨でなく、司法が行政に介入することを必要なら閉める程度に、救済の要請が高い場合を指すと解されます。したがって、損害の回復困難性などの損害の性質に加え、処分の性質、態様も加味して判断されることになります(37条の2第2項)。

    ②-①-②補充性

    この要件は、非申請型の義務付け訴訟に変わる代替ルートが特に法律により規定されているような場合に限り、適用されるべきです(過大な申告に対する減額を求める更正請求制度など)。もっとも、自己に対する処分を求めるような場合、たとえば、自己に対する職権取り消しを義務付けるとか、自己に対する処分の変更を義務付ける訴訟などは、取消訴訟によるべきと解されます。

    ②-①-③原告適格

    非申請型の義務付け訴訟には、一定の処分を義務付ける法律上の利益を有する者に限って、提起できます。法律上の利益とは、原告が有する処分により侵害される可能性のある法律上保護された利益を指します。そして、法律上保護されていると言い得るには、処分の根拠法規が一般公益に解消させることなく、個別具体的な法益として保護している必要性があります。法律上保護された利益であるか否かについては、関連法規の趣旨を含め、また、処分の結果侵害される利益の、程度、性質も勘案してこれを決定することになります。

    ②-②本案要件

    非申請型の義務付け訴訟が認容される要件です。

    ②-②-①本案勝訴要件

    非申請型義務付け訴訟の本案勝訴要件は、処分をすべきことが根拠法規から明確であり処分をしない裁量を観念する余地がない場合、ないし、裁量を観念できても処分をしないことが裁量権の逸脱・濫用にあたる場合です。一義性の要件は従来訴訟要件とされたが、本案要件として明文化されました。

    ②-②-②第三者の手続き保障

    義務付け訴訟が認容されれば、第三者は手続き保障を受けられないままに、不利益処分を受けることになります。従って、第三者の手続き的利益を保護するため、第三者に対する訴訟告知(民事訴訟法53条)を経た場合のみ、本案が認容されるべきです。

    ③申請型義務付け訴訟

    法令に規定された申請権に基づく申請者にのみ原告適格が認められる、申請前提型の義務付け訴訟です。

    ③-①訴訟要件

    ③-①-①併合提起

    申請型の義務付け訴訟は、行政の不作為、ないし作為の違法を訴訟要件・本案要件とされます。したがって、それらの行為の違法確認、取消などを宣言する他の抗告訴訟と併合提起され、初めて適法な法律関係を実社会に反映できることになります。そこで、申請型義務付け訴訟において、他の抗告訴訟との併合提起が訴訟要件とされます。

    ③-①-②原告適格

    法令に基づく申請権者が申請を行った場合に原告適格が付与されまする。明文に規定されなくとも、解釈上の申請権限で足ります。また、内規、要綱に基づく場合も一般条理上、応答義務が認められればたります。

    ③-②本案要件

    申請型義務付け訴訟は、ⅰ.併合提起された訴訟に理由があると認められ、ⅱ.処分をしない裁量が認められない(一義性)か、裁量が認められても処分をしないことが裁量の逸脱・濫用といえる場合に違法となります。

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    弁護士齋藤理央

    東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
    【経 歴】

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    大阪府豊中市出身

    早稲田大学教育学部卒業

    大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

    2010年    東京弁護士会登録(第63期)

    2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

    2021年    弁理士実務修習修了

    2022年    今井関口法律事務所参画

    【著 作】

    『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

    『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

    『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

    『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

    『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

    『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

    『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

    【セミナー・研修等】

    『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

    『リツイート事件最高裁判決について』

    『BL同人誌事件判決』

    『インターネットと著作権』

    『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

    『著作権と表現の自由について』

    【主な取扱分野】

    ◆著作権法・著作権訴訟

    ◆インターネット法

    ◆知的財産権法

    ◆損害賠償

    ◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

    【主な担当事件】

    『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

    『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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