著作権等侵害に基づく損害賠償請求訴訟において想定される損害の費目のうち、主なものを挙げます。
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財産的損害(逸失利益)
侵害者の侵害行為によって財産的損害が生じることは明らかと考えられます。問題となるのはその額の算定です。著作権侵害により生じた損害については額の算定・立証が困難であることから推定規定などが置かれています(著作権法114条各項)。
弁護士費用等積極損害(著作権)
著作権侵害によって生じた弁護士費用等を積極損害として損害賠償請求できます。但し、その認容額は、必ずしも十分といえないのが現在の訴訟実務です。
著作権(利用許諾権)侵害の慰謝料
昭和57年3月8日東京地方裁判所民事第29部判決(昭和51年(ワ)8446号 将門記事件第一審)は、著作権ないしは、著作権により保護される、「何人に著作物の利用を許諾するかを決定する自由」について、「原則として法的に保護されるべき人格上の利益」に当たるとして、無断使用について精神的損害を慰謝しなければならないと断じました。ただし、著作権侵害に基づいて慰謝料を認めた判例は、将門事件第一審一例と言われています。
昭和57年3月8日東京地方裁判所民事第29部判決(昭和51年(ワ)8446号 将門記事件第一審)抜粋
原告【A】は、被告の本件行為によりその名誉が毀損された旨主張するけれども、被告の本件行為により原告【A】に対する社会的声価が低下せしめられたことをうかがわせるに足る事情は本件証拠上認められず、また、前顕検甲第一、第二号証によれば、被告両図書には、本件訓読文の転載部分の下欄に筆者不明の文章が掲記されているけれども、右文章は、右転載部分の数頁前から掲載されている「論考・将門記」と題する文章の続きの部分であることが認識でき、また、本件訓読文の転載部分の末尾には、「新撰日本古典文庫・【A】校註」との記載があることが認められるから、右下欄部分が原告【A】の著作になるかのような誤解を与えるものとはいえず、これをもつて、原告【A】の名誉を毀損したものということはできない。 |
著作者人格権侵害
昭和61年5月30日最高裁判所第二小法廷破棄差戻判決(昭和58年(オ)516号 パロディー事件第二次上告審)は、次のとおり述べて著作権侵害と著作者人格権侵害を別個の審理対象と判断しました。したがって、著作権侵害とは別に著作者人格権侵害を請求するときは別個の訴訟物に基づく請求を併合提起してることになります。
昭和61年5月30日最高裁判所第二小法廷破棄差戻判決(昭和58年(オ)516号 パロディー事件第二次上告審)抜粋
複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが(旧著作権法(昭和四五年法律第四八号による改正前のもの。以下「法」という。)二条ないし一〇条、二三条等)、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである。 |
著作者人格権侵害の慰謝料
著作者人格権は財産的権利ではなく、その目的は営利面にないため、人格権侵害によって逸失した経済的利益というのは通常想定されません。そこで、著作者人格権侵害については、精神的損害の慰謝がもっぱらの損害賠償対象ということになります。
損害額は事案に応じて、著作物の性質や権利侵害の態様などを踏まえて裁判所によって判断されることになります。
弁護士費用等積極損害(著作者人格権)
著作者人格権侵害によって必要となった弁護士費用等、相当因果関係の範囲にある損害は原則的に賠償されます。著作権侵害と著作化者人格権侵害による積極損害は原則的に別の訴訟物となりますが、著作権侵害と著作者人格権侵害を併せて請求する場合に分けて請求することはあまりないと考えられます。
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