知的財産権訴訟と訴額

差止請求と廃棄請求が競合する場合

東京地方裁判所知的財産権法専門部では、訴訟において廃棄請求と差止請求が競合する場合の訴額は原則的に合算する取り扱い(ウェブサイトに記載あり。)となっています。なお、扱いは係属部により異なる場合も想定されますので、東京地方裁判所以外の裁判所に訴訟提起する際は、訴訟を提起する裁判所に念のためお問合せされることをお薦めいたします。

信用回復措置、著作者人格権侵害の名誉回復措置の請求

東京地方裁判所知的財産権法専門部では、訴訟において信用回復措置、著作者人格権侵害の名誉回復措置の請求を行う場合の訴額は広告費を算定できる場合は広告費に拠ること(ウェブサイトに記載あり。)となっています。知的財産権法ではありませんが、民法723条に基づく名誉回復措置として新聞の謝罪広告を求める場合新聞における普通の広告費によって訴額を算定すべきと判示した下記判例があります。

昭和33年 8月 8日最高裁第三小法廷判決(昭和28年(オ)1044号 謝罪広告請求事件)

主  文

本件上告を却下する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理  由

職権で調査するのに、上告人らの本訴請求は、特定日刊新聞七紙の朝刊紙面上特定の部分に特定の体裁内容を有する謝罪広告文の掲載を求めるものであることが記録上明らかであるから、右請求が民法七二三条にいわゆる原状回復処分として為されるものであつても、これを訴訟法にいわゆる財産権上の請求と解するに妨げない。そして、その訴訟物の価額は新聞広告掲載に要する普通の広告費によつて算定するを相当とし、本訴においては、記録四〇丁の乙一号証の二の写によりそれが金三九〇万八五二〇円と認められるから、上告状には右に対応する金四万一七〇〇円の印紙を貼用すべきであることが明らかである。ところが、上告人らは本件上告状に金六二〇円の印紙を貼用したに止まるから、当裁判所裁判長垂水克己は昭和三三年六月一四日付で上告人らに対し不足額に相当する金四万一〇八〇円の印紙を一四日内に追貼すべき旨の命令を発し、右命令は同年同月一七日上告人らの代理人に到達したに拘らず、上告人らはついに右印紙を追貼しない。されば本件上告は結局不適法でありその欠缺が補正する能はざるものといわなければならない。
よつて、昭和二九年法律一二七号附則四項、民訴三九六条、三八三条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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