行政・公法

差止訴訟

①差止訴訟:一定の処分・裁決をすべきでないのに、これがされようとしてる場合に、処分、裁決をしないことを命ずるを求める訴えを差止訴訟といいます。事後的な取消では間に合わず、事前に処分を差止める必要性がある場合に認められます。したがって、取消訴訟よりも訴訟要件、本案要件が加重されています。

②訴訟要件
②-①処分の特定性:されるべき処分の特定性として、原告がどの程度処分を特定して訴訟を提起すべきかが問題となります。この点、あまり厳格に特定性を要求すれば、差止訴訟利用が困難となります。したがって、裁判所が差止を命ずるべき処分を、他の行政処分と区別できる程度に、特定されていることが必要と解されます。
注1)したがって、処分を特定できない場合、侵害されることになる法的利益の確認を求めて、当事者訴訟による方法も考えられます。また、両訴訟を相互排他的な関係に捉えるべきでなく、並行的に訴えを提起することも考え得ます。
②-②処分蓋然性:また、差止をすべき必要性が認められるには、処分がされる相当の蓋然性が、客観的に認められることが必要です。
②-③重大な損害:処分がされることにより、原告に重大な損害が生じることが必要です。司法による事前救済を必要とするか否かを分けるメルクマールであり、損害の回復困難性など、損害自体の性質に加えて、処分の性質、態様も加味されます。
②-④補充性:抗告訴訟は、事後的な救済が原則であり、処分後に取消訴訟を提起し、執行停止を求めたのでは、重大な損害の発生が回避できない場合に限り、差止訴訟の利用が認められるべきです。
②-⑤原告適格:自己に対する処分の差止であれば肯定されます。第三者の場合、準用される9条2項に基づいた判断が要請されます。

③本案要件:差止訴訟で勝訴するには、差止の対象とされる処分を行わないことにつき、ⅰ.行政庁に裁量が認められない場合(根拠法令の一義性)であるか、ⅱ.裁量が認められるとしても、処分を行うことが裁量の逸脱・濫用に当たる場合であることが必要です。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

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大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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