昨日、文化庁に文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見(平成31年1月6日締切)を提出しました。
意見は、以下のとおりです。なお以前建付をエントリしたB:ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについては、個人的には意見はない、という結論に至ったので、意見提出していません。
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見
①A:リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応
②賛成
③意見の内容
「侵害コンテンツへの誘導行為」に対する法規制には賛成です。
また、その方法としては「リンク」という言葉に拘泥することなく、デジタル時代に対応した支分権の整理・再構成を優先させるべきと考えます。
例えば、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ第12ページに引用されているリツイート事件控訴審判決は、インラインリンクを一つの争点としました。
しかし、画像ファイルの埋め込み表示を実施するにあたって、インラインリンクは、必須の技術ではなく、リンクを経由することなく、画像の埋め込み表示を実現することも可能です。
そこで、「リンク」という技術用語に拘泥することなく、「侵害コンテンツへの誘導行為」という社会的な効能、権利侵害への影響の度合いに機軸を置いた各支分権の整理・再定義を検討すべきと考えます。
まずは、公衆送信行為と送信可能化行為の切り分けを含めた、社会的効能に着目した概念の整理が必要ではないかと考えられます。
上記に言及したインラインリンクでは、殆ど複製権のすり抜けと表現してよい現象が生じてしまっており、一部デジタルの分野では複製権が本来の役割を果たしていないと考えています。
実際に、母体となるHTMLファイルへの埋め込みを、画像データを文字通り埋め込んで集合させたうえでアップロードする手法で実現した場合は複製権侵害となり、クライアントコンピューター段階でインラインリンクによってデータの集合を実現した場合は複製権侵害が生じないという結論は、両方の方法で実現されるHTMLファイルへの画像データの埋め込み表示という社会的効能が全く同等であることに鑑みても、バランスを欠いていると考えられます。
この状態は複製権の機能不全にほかならず、その原因は、本来複製権が把捉を予定していた行為と同等の行為が、デジタル時代の到来により、現在の複製権をすり抜けて実現可能となっているからと考えます。
そこで、デジタル時代に把握すべき行為を含めて把捉できる複製行為の再定義が必要と思料されます。
そもそも、通電状態が解消されたときに情報が消失するメモリ部へのデータの展開(実態はデータのクローニング)と、通電状態が解消されたときに情報が消失しないハードディスクキャッシュエリアへのデータの送受信(実態は同様に単なるデータのクローニング)が、複製権侵害に当たらないのか、当たらないとすればそれはなぜなのか、一度整理が必要ではないかと考えられます。
複製権の整理の仕方によっては、侵害主体論で「侵害コンテンツへの誘導行為」の大部分に対応できる状況となる可能性もあるのではないかと考えます。
また、自動公衆送信行為も、送信可能化行為のほかに行為が観念できるのか明らかでない側面もあります。
送信可能化行為の後、クライアントコンピューターによる情報の受信という結果が生じた場合に自動公衆送信となるのであれば、権利侵害者の権利侵害行為としては、送信可能化行為だけということになってしまいます。
しかし、例えば、パンドラTV事件一審判決は、送信可能化行為を行っていないコンテンツプロバイダにも、「外形的には,被告会社は,少なくとも 公衆送信(送信可能化を除く )はしている」と判示しています(平成21年11月13日東京地方裁判所判決(平成20年(ワ)第21902号 著作権侵害差止等請求事件)判決書第40頁)。
控訴審判決でも当該言及部分は否定されていません。
このように、そもそも、送信可能化と切り分けられるべき自動公衆送信「行為」について、存在及び定義が曖昧な状況があります。
考えられるのは①送信可能化状態を維持する不作為の行為や、②リンクを通して送信可能化行為だけではリーチしなかったクライアント層に情報の拡散を拡大する作為行為をもって、自動公衆送信行為と捉える解釈です。
このように、自動公衆送信行為の定義づけによっては、「侵害コンテンツへの誘導行為」の一部を規制することができる可能性もあるため、まずは、デジタル時代に対応した支分権の整理・再定義を検討すべきと考えます。
さらに、HTMLファイルへの画像データなどの埋め込み表示については、公衆伝達権及び上映権との関係も不明確な点があり、両概念のデジタル時代に対応した概念整理・再構成も急がれるべきと考えます。
そもそも、ハイパーリンクとインラインリンクを同列に議論すること自体が、「リンク」という技術概念にとらわれすぎていないか懸念するところです。
「リンク」よりも、各支分権が禁止すべき行為が、デジタル時代の著作物配信の実態を把捉しきれているか、各支分権が保護しようとしている社会的効能は何であり、それはデジタル時代にどのように実現されているのかという観点から、各支分権がデジタル時代に有効に機能しているのか再点検するべきと思われます。
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