著作権法

リーチサイト規制ー令和2年著作権法改正ー

令和2年著作権法改正によって、リーチサイトに対する規制がみなし侵害という形で規定されました。今回はこのリーチサイト規制について、解説していきたいと思います。

規制される行為

令和2年改正著作権法によるリーチサイト規制でみなし侵害とされるのは、「送信元識別符号等…の提供により侵害著作物等…の他人による利用を容易にする行為」(著作権法113条2項柱書)です。すなわち、作為による積極的な「侵害著作物等利用容易化」行為が、著作権等侵害とみなされる行為になります。

あるいは、「当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為」(著作権法113条3項)です。すなわち、侵害著作物等利用容易化を防止しない不作為についても、侵害とみなされることが規定されています。

著作権法113条2項柱書

送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

著作権法113条3項

侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つている者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供しているに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していることその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)又は侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つている者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供しているに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していることその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)が、当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において又は当該侵害著作物等利用容易化プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

ウェブサイト等

今回の規制は、「ウェブサイト等において」行われるリンクなどを用いた侵害著作物等の利用を容易にする行為を対象としています。

そこで、まずこの、ウェブサイト等の意義が問題となります。

ウェブサイト等の定義規定

ウェブサイト等については著作権法113条4項に定義規定が置かれています。

「前二項に規定するウェブサイト等とは、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の集合物(当該集合物の一部を構成する複数のウェブページであつて、ウェブページ相互の関係その他の事情に照らし公衆への提示が一体的に行われていると認められるものとして政令で定める要件に該当するものを含む。)をいう」。

すなわち、ウェブサイト等とは、①「送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通する」②「ウェブページ」③「の集合物」をいうことになります。

送信元識別符号は、「自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう」と著作権法47条の5第1項1号(括弧書内)で定義されています。

また、「ウェブページ」と「集合物」は、著作権法施行規則25条及び著作権法施行令65条にそれぞれ要件が定められています。

ウェブページの要件(著作権法施行規則25条)

著作権法施行規則第十三章 インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録
同規則第二十五条 

法第百十三条第四項の文部科学省令で定める電磁的記録は、HTMLその他の記号及びその体系で作成された電磁的記録で送信可能化されたものであつて、インターネットを利用した閲覧の際に、一の送信元識別符号によつて特定された一のページとして電子計算機の映像面に表示されることとなるものをいう。

集合物の要件(著作権法施行令65条)

(公衆への提示が一体的に行われていると認められる要件) 著作権法施行令第六十五条 

法第百十三条第四項の政令で定める要件は、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(同項に規定するウェブページをいう。以下この条において同じ。)の集合物の一部を構成する複数のウェブページに次の各号に掲げるウェブページのいずれもが含まれていることとする。

一 当該複数のウェブページに共通する性質を示す名称の表示その他の当該複数のウェブページを他のウェブページと区別して識別するための表示が行われているウェブページ

二 当該複数のウェブページを構成する他のウェブページに到達するための送信元識別符号等を一括して表示するウェブページその他の当該複数のウェブページの一体的な閲覧を可能とする措置が講じられているウェブぺージ

掲示ウェブサイト等

著作権法113条2項で規制されるのは、同項1号イ、ロに掲げられた下記のいずれかの条件をさらに満たすウェブサイト等です。

著作権法113条2項1号 

次に掲げるウェブサイト等

 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第百十九条第二項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等

 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等

プログラム

また、今回の規制は、「プログラム…を用いて行うもの」を規制の対象にしています。

プログラムとは、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをい」います(著作権法2条1項10号の2)。

著作権法113条2項で規制されるのは、同項2号イ、ロに掲げられた下記のいずれかの条件をさらに満たすプログラムです。

著作権法113条2項2号 

次に掲げるプログラム

 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム

 イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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