パブリックコメントと著作権

パブリックコメントを巡る裁判例

平成25年8月30日判東京地裁判決(平成24年(ワ)第26137号 著作権及び出版権侵害差止請求事件)では、パブリックコメントをまとめて概要を記載した書面の作成による翻案権侵害の成否について以下の通り判示されています。

下記裁判例のように、パブリックコメントはその後概要をまとめた書面を行政などの側でつくることが予定されていることから、翻案権侵害や同一性保持権侵害、氏名表示権侵害は成立し難いでしょう。

翻案権侵害について

(1) 本件評価書の「表8.2-1(1)~(9) 準備書についての住民意見の概
要及び事業者見解」の「環境保全上の見地からの意見」欄,表8.2-2 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「その他意見」欄(甲 4)においては,本件意見書(乙イ3の1~7,乙イ3の11)の表現の一 部を抜粋したり,表現を要約したりしている。
(2) しかし,本件条例21条2項2号によれば,事業者は,評価書に「第1 8条第1項の規定により述べられた意見の概要」を記載することが義務づけ られているのであるから,事業者に意見書を提出した者は,その意見におけ る表現が評価書において意見の概要を表す限度で改変されることを当然に容 認した上で意見書を提出したものとみなされる。
本件意見書の各作成者も,評価書において意見の「概要」が記載されるこ とを容認した上で本件意見書を被告エコ・パワーに提出したのであるから, 本件評価書において意見の概要を表す限度で本件意見書の表現を改変したと しても,翻案権侵害は成立しない。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

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◆著作権法・著作権訴訟

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◆知的財産権法

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『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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