YouTubeの利用規約上、動画の上に発生する知的財産権についてどのようなライセンスが成立しているでしょうか。
結論から言うと、YouTubeにアップロードした動画の知的財産権はユーザーにキープされるものの、YouTubeを通した利用に対しては①Youtube運営及び、②Youtubeを利用する他のユーザーに対して、広範な利用許諾(以下、ライセンスと言います。)を与えることになっています。
YouTubeの利用規約のうちお客様のコンテンツと行動に、ライセンスに関する条項が定められています。
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付与する権利
上記のYouTubeの利用規約において、まず、「お客様は、ご自身のコンテンツに対する所有権を保持します」と記載があります。所有権という表記になっていますが、YouTubeに動画をアップロードする過程で通常所有権は問題とならないため、ここでは、知的財産権という理解で所有権という言葉を当てていると解釈できそうです。
つまり、動画の知的財産権は動画をアップロードしたことでYoutube運営に移転することは無く、ユーザーに留保されるという理解となろうかと思います。実際にも以後、ライセンスの条項が続くこととも文理的に整合します。つまり、知的財産権が移転するのであれば、ライセンスはそもそも問題にならないことから、ライセンス条項が含まれるYouTube利用規約においては知的財産権が留保されることが前提となっていると理解して問題がないかと思われます。
さらに、利用規約は、「ただし、YouTube に対して、および本サービスを利用する他のユーザーに対して、以下の一定の権利を付与していただく必要があります」と定めています。そこで、このライセンスの内容を見ていく必要があります。
YouTube へのライセンス付与
最初に述べた通り、ライセンスは大きく2つあり、①Youtube運営に対するライセンスと、②Youtubeを利用する他のユーザーに対するライセンスがあります。このうち、①Youtube運営に対するライセンスは、下記の内容となっています。
すなわち、Youtube利用規約上、「本サービスにコンテンツを提供することにより、お客様は YouTube に対して、本サービスならびに YouTube(とその承継人および関係会社)の事業に関連して当該コンテンツを使用(複製、配信、派生物の作成、展示および上演を含みます)するための世界的、非独占的、サブライセンスおよび譲渡可能な無償ライセンスを付与するものとします」と規定されています。
根拠となっている法律自体が異なりますが、日本の著作権法に引き直すと概ね、「複製」は複製権、「配信」は公衆送信権、「派生物の作成」は翻案権、「展示及び上演」は上演権、演奏権、口述権及び公衆伝達権に相当すると理解されます(但し、文理から上映権や、公衆送信される動画で問題になる場面は想定しがたいものの展示権も含まれていると解する余地もあります(但し、利用規約の展示は、米国著作権法106(5)to display the copyrighted work publiclyを念頭に置いているため、必ずしも日本国著作権法の展示権を意味するものではないと思料されます。)。)。
このように、動画のインターネット配信において問題となる利用方法についてほぼすべて許諾することになりそうです。特に注意が必要なのは、翻案行為に相当すると思料される「派生物の作成」についてもライセンスを付与する点です。
さらに利用規約には、「これには、本サービスの一部または全部を宣伝または再配布することを目的とした使用も含まれます」としています。つまり、これまでのライセンスはYoutubeを利用するうえでYoutube運営が配信を適法化するために必要なライセンスとも理解できますが、ここでは、さらに積極的にYoutubが配信を越えたYoutubeの広告活動のためにアップロードされた動画を自由に利用できることが確認されています。つまり、この規約をみると、アップロードされた動画をYoutube側が加工して宣伝に利用することに対しても同意を与えることになります。
他のユーザーへのライセンス付与
次に利用規約は、②YouTubeを利用する他のユーザーに対するライセンスについて条項を設けています。規約においては、「お客様は、本サービスを利用する他の各ユーザーに対して、本サービスを通じてコンテンツにアクセスし、(動画の再生や埋め込みなど)本サービスの機能によってのみ可能な方法で、複製、配信、派生的著作物の作成、展示、上演などのかたちでコンテンツを使用する世界的、非独占的な無償ライセンスを付与するものとします」と規定されています。
前記と同様に、日本の著作権法に引き直すと概ね、「複製」は複製権、「配信」は公衆送信権、「派生物の作成」は翻案権、「展示及び上演」は上演権、演奏権、口述権及び公衆伝達権などに相当すると理解されます。
ただし、規約にはさらに注意的な付記があり、「このライセンスは、本サービスから独立した方法でコンテンツを使用する権利や権限を与えるものではありません」と注意的に記載されています。
つまり、他のユーザーに対しては、YouTubeの公式機能を利用する限りで広範なライセンスを付与されるに過ぎないことが注意的に付記されています。YouTube運営に対しては必ずしもYouTube上の利用に限られない広範なライセンスを付与ことになりますので、この点が①YouTube運営に対して与えるライセンスと、②YouTube利用者に与えるライセンスで最も異なる部分だと思われます。
つまり、①YouTube運営に対してはYouTube上のサービスに限られない広範なライセンスを付与することになるのですが、②YouTubeを利用する他のユーザーに対しては、あくまでYouTube上のサービスを利用する場合に限り動画の利用を許諾することになっています。
ライセンスの有効期限
最後にYouTubeの利用規約にはライセンスの期限も定められています。
規約は、「お客様が付与するライセンスは、お客様が本サービスからコンテンツを削除した後も、商業的に合理的な期間にわたって存続します」と定めています。
つまり、ライセンスは動画をアップロードした後永久に存続するわけではなく、動画を削除した後、合理的な期間で消滅することになっています。
この点は動画がアップロードされている限りで広範なライセンスを付与する代わりに、削除することでライセンスを消滅させられるという点で良心的な規約になっていると評価できます。アップロードによって永久にライセンスして利用許諾の自由を失うわけではなく、動画を削除することでライセンスを(合理的な期間経過後)取り消す選択肢がユーザーに対しては与えられていることになります。
ご相談は弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)まで
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