カリフォルニア州法人の資格証明

インターネット上の権利侵害は、ツイッター、FACEBOOK、インスタグラム、YouTube、グーグルなどSNSやプラットフォーム上で生じます。こうしたSNS、プラットフォーマーはカリフォルニアに登録がある米国法人が運営主体であることが専らです。そして、カリフォルニア外国法人を相手に訴訟や仮処分などの法的手続きをとる際、裁判所に相手方となる米国企業の資格証明書を提出する必要があります。

米国カリフォルニア法人が運営するSNSやプラットフォームにおける権利侵害については、米国ツイッターインク、フェイスブックインク、グーグルエルエルシー等に対して発信者情報開示などの対応実績がある弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)にお問い合わせください。

資格証明書の要請

外国法人がプロバイダの場合、任意での発信者情報開示には応じないことが多く、発信者情報の開示を求めて仮処分や訴訟を提起する必要があります。

そして、法人を原告、被告等とする訴訟や仮処分を日本の裁判所に提起する場合、実務上、法人の代表者の資格証明書が必要とされています。

この根拠は、明文上明確でないところもあります(*1が、いずれにせよ原告等のサイドで資格証明書を用意して提出することを検討しなければなりません。

※1)民事訴訟規則18条によって準用される同規則15条は、原則的に被告等となった法人が自己の代表者による訴訟行為の有効性を証明する条文と考えられます。また、民事訴訟規則23条も同様と考えられます。したがって、同条を直接原告等が訴訟提起等する際に資格証明書を提出する根拠とするのは、違和感があります。原告等が書面による証明を要求されるのは、直接には訴訟提起(訴状の記載事項の正確性)とその送達の有効性という訴訟要件について、証明する必要があるからではないかと考えられます。すなわち、訴状には被告法定代理人の記載が要求され(民事訴訟法133条2項1号)、さらに法人は、その代表者でなければ、有効な訴訟行為を行い得ないと考えられます(民事訴訟法37条、同法31条参照)。そこで、被告等の代表者の記載が正確でないと訴状は補正の対象になり得ますし、適正な代表者のもとに訴状送達がされなければ、有効な訴状送達という訴訟要件を欠くことになり得ます。よって、訴えの提起(訴状記載の正確性)、訴状の送達の有効性という訴訟要件を立証するために、原告において、資格証明書が必要とも考えられます。

カリフォルニア法人の資格証明書


外国法人の登記に代わる資格証明は、外国法人が登録している国、州によって取り寄せ方法が異なります。

たとえば、ツイッター運営社(TWITTER.INC)、グーグル運営社(GOOGLE.INC)、フェイスブック運営社(FACEBOOK INC)、インスタグラム運営社(INSTAGRAM.LLC)YOUTUBE運営社(YOUTUBE.LLC)、SING!・Ocarina等運営社(SMULE.INC)など世界的IT企業の本社の多くは、カリフォルニア州に登録があります。

アメリカのINC(インコーポレイション)、LLC(リミティッドライアビリティカンパニー)などの代表者事項などは、各州に対応した州務長官事務所が管轄しています。

例えば、ツイッター運営社(TWITTER.INC)、グーグル運営社(GOOGLE.INC)、フェイスブック運営社(FACEBOOK INC)、インスタグラム運営社(INSTAGRAM.LLC)YOUTUBE運営社(YOUTUBE.LLC)、SING!・Ocarina等運営社(SMULE.INC)などについては、カリフォルニア州務長官が各法人からの申請をファイリングしている最新の年次報告書(STATEMENT OF INFOMATION)で代表者(として申請されている者)を確認できます(※2。

※2)YOUTUBEは現在グーグルエルエルシーの管理となっていることから、グーグルエルエルシーの資格証明書を取得し、グーグルエルエルシーに対して法的手続きをとることになります。

アイルランド法人と米国法人など相手方の選択が必要な場合

ツイッターや、フェイスブックなど複数のIT企業において、利用規約で日本国民がサービスを利用する場合の契約主体は、カリフォルニア州の法人ではなく、アイルランド法人とされている例がありました。

アイルランドは、IT企業の招致を積極的におこない、世界的なIT企業の子会社がアイルランドに多く存在します。

しかしながら、2021年5月現在、発信者情報開示請求などについては、ツイッターインク、フェイスブックインク、グーグルエルエルシーなど主要なプラットフォーマーは、米国法人を相手方にすることが、可能かつ要請されている状況です。

もっとも、この点は扱いが変動することがあり、実際に仮処分などをご検討の際はまずはご相談ください。

SOI送付申請


カリフォルニア州の登録情報は、最新の年次報告書(STATEMENT OF INFOMATION)であれば、オンライン上でも、確認できます。ただし、日本の裁判所に必要になる資格の証明まで、WEB上のSOIで足るか不透明な部分も多く、基本的には、カリフォルニア州務事務所による、写しであることの証明(CERTIFICATION OF A COPY)を得ることが、望ましいと考えられます。

仮に訴訟を提起した後、CERTIFICATION OF A COPY 付きのSOIの取得に時間がかかれば、訴訟却下ともなり兼ねませんので、事案に応じて、慎重な判断が必要になります。もっとも、資格証明書の要件や、どのような書面の提出が必須であるかなど、必ずしも明文では定められていません。場合によっては弁論主義を一定程度援用して、被告等の訴訟応答によっては、提出書面の要件をある程度緩和することも、裁判所の判断によっては可能なケースもあるかもしれません。

万全を期して、CERTIFICATION OF A COPY 付きのSOI等を取得する場合、カリフォルニア州務事務所に、郵送によるSOI送付申請を行う必要があります。

カリフォルニア法人に対する発信者情報開示などの業務

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、カリフォルニア法人の資格証明書取得や、発信者情報開示の仮処分・訴訟の提起を業務として行っています。

ツイッター

ツイッターに対する発信者情報開示については、現在、携帯電話番号の開示が可能となったことから、仮処分と本案訴訟の選択などの戦略的な行動が求められます。

ツイッター/Twitterに対する発信者情報開示は専門家にご相談ください

このようにTwitter/ツイッターに対する発信者情報開示は、外国法人に対する法的手続を経る必要があるため、専門家でなければ対応は困難な場合があります。また、アクセスログについては時間制限がシビアです。まずは、特定可能性を含めて専門家にお早めにご相談頂くことをお薦めします。弊所では、複数の対応実績がありますので、Twitter/ツイッターでの権利侵害にお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

インスタグラム

インスタグラム/Instagramは、主に写真を投稿するウェブサイトで、日本でも高い人気を誇るSNSです。

インスタグラム/Instagramは写真などの画像投稿がメインのSNSですので名誉棄損や信用棄損は比較的起こりにくいと言われていた時代もありました。

しかし、コメント投稿機能やストーリー投稿機能など様々な機能がありますので、名誉棄損やプライバシー侵害も生じています。また、その他、なりすましや商標権侵害なども、発生しています。

特にインスタグラムは、若年層(特に女性も利用者が多いSNSという特徴があります。)に利用者が多いことから、いじめや嫌がらせ、ストーカー行為に利用されることがあります。

このように、誹謗中傷やなりすまし、嫌がらせなどの人格権侵害も多く生じています。

また、インスタグラム/Instagramにおける権利侵害は、写真はもちろん、イラストや映像などの無断投稿及び、無断プロフィールアバター利用など、著作権侵害、パブリシティ権侵害などの知的財産権侵害も生じています。知的財産権侵害は東京地方裁判所知財専門部が対応するため、依頼する弁護士に対応経験があるかは一つの重要なファクターです。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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