国内レンタルサーバー事業者に対する発信者情報開示

国内のレンタルサーバー事業者に対する発信者情報開示について、情報をまとめています。

オリジナルのドメインで活動するウェブサイトなど、レンタルサーバーを借りて運営されていることが一般的です。

例えば、まとめサイトなどは、レンタルサーバー上にオリジナルドメインを取得してサイトを運営していることが一般的です。

国内主要レンタルサーバー事業者に対する発信者情報開示

国内では、エックスサーバー、さくらインターネット、GMOインターネットなどがレンタルサーバー主要大手企業となります。国内主要レンタルサーバーに対して発信者情報開示を請求することになります。主要レンタルサーバー事業者各社は、発信者情報開示の対応にも慣れており、代理人弁護士も対応経験が多いため、対応が比較的スムーズです。

国内の主要レンタルサーバーに対する発信者情報開示は、個別に情報をまとめています。

国内レンタルサーバー事業者(又貸し)

レンタルサーバー事業者は、大手レンタルサーバー事業者からサーバーを借り、さらに顧客に対してサーバーを貸し出している場合があります。

国内レンタルサーバー事業者に対する発信者情報開示裁判例

平成30年3月23日東京地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載は、弊所が担当した国内レンタルサーバー事業者に対する発信者情報開示請求訴訟です。裁判所は下記判示して発信者情報開示請求を認めました。

事案の概要
1 本件は,原告が,氏名不詳者がインターネット上のウェブサイトにアップロードした画像は原告が著作権及び著作者人格権を有する写真を複製するなどし て作成したものであるから,同行為により原告の権利が侵害されたことは明ら かであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1 項の開示関係役務提供者である被告に対し,同項に基づき,被告の保有する発 信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠により認定する ことができる事実)
(1) 被告
被告は,iPhone・Androidアプリの開発,ウェブサイトの企 画・制作等を業とする情報通信技術関連企業である。
(2) 画像のアップロード 氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は,平成28年5月8日,別紙侵害情報目録記載1のURLに同目録記載2の画像(以下「本件画像」と いう。)をアップロードした上,ウェブサイト「きじなび」(http:以下省 略)の別紙URL目録記載の各URLにおいて公開した。(甲2,10~1 2)
(3) 開示関係役務提供者の該当性 被告は,上記アップロードにつき,プロバイダ責任制限法4条1項の開示関係役務提供者に該当し,別紙発信者情報目録記載の各発信者情報を保有している。

争点
(1) 権利侵害の明白性
(2) 開示を受けるべき正当理由の有無 第3 争点に関する当事者の主張

1 争点(1)(権利侵害の明白性)について

〔原告の主張〕
原告は,別紙写真目録記載の写真(以下「原告写真」という。)の著作者で あり,原告写真について著作権及び著作者人格権を有する。
しかるに,本件発信者は,前記第2,2(2)のアップロードに際し,原告写 真を無断複製し,送信可能化し,改変し,著作者名として表示された原告の氏 名を切除し,もって原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権 (同一性保持権,氏名表示権)を侵害した。
〔被告の主張〕 原告が原告写真について著作権及び著作者人格権を有するとの点については不知。

2 争点(2)(開示を受けるべき正当理由の有無)について 〔原告の主張〕
原告は,本件発信者に対して損害賠償請求権を行使し,その損害を回復させ る必要性がある。
〔被告の主張〕 不知。

当裁判所の判断
1 争点(1)(権利侵害の明白性)について
証拠(甲15,16)によれば,原告写真は原告の設営するウェブサイト上 で公開され,同ウェブサイトには原告の氏名が表示されていることが認められるのであって,これに,原告が原告写真のポジフィルムの写真原版を所持して いること(甲18),原告自身,原告写真を撮影した日時,場所,状況等を具 体的に陳述しており(甲19),これは原告の日記(甲17)によっても裏付 けられることなどを併せ考慮すると,原告写真は原告が撮影したものであって, 原告が著作権及び著作者人格権を有するものと認めるのが相当である。
そして,前記第2,2のとおり,本件発信者は別紙侵害情報目録記載1のU RLに本件画像をアップロードし,これを公開しているところ,証拠(甲2, 10~12)によれば,これは原告写真を複製し,送信可能化し,改変し,原 告の氏名を著作者名として表示しなかったものであることが認められる。
したがって,本件発信者の行為によって原告の著作権(複製権,公衆送信権) 及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)が侵害されたことは明らかと いうべきである。
2 争点(2)(開示を受けるべき正当理由の有無)について 上記1によれば,原告は本件発信者に対して著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)を理由とする不法行為に基づ く損害賠償請求権を有するところ,その行使のためには,本件発信者に係る情 報の開示が必要であるものと認められる。
したがって,原告には被告から上記開示を受けるべき正当な理由があるもの ということができる。
3 結論 よって,本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

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◆著作権法・著作権訴訟

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◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

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『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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