エックスサーバーに対する発信者情報開示

エックスサーバー株式会社は、シックスコアやエックスサーバーなどのレンタルサーバー事業を運営するインターネット事業者です。

レンタルサーバー上での権利侵害について、エックスサーバー株式会社は発信者情報開示義務を負う開示関係役務提供者に当たりますか?

例えば、令和元年12月 3日大阪地裁判決(令和元年(ワ)7518号 発信者情報開示請求事件)は、エックスサーバーたる「被告は,サーバーの販売,貸与,保守及び管理業務などを目的とする株式会社である」と認定しています。

そのうえで、同裁判例は、「本件投稿は,不特定の者が自由に閲覧できるものであって,法2条1号の「特定電気通信」に該当し,被告は,その保有するサーバ(法2条2号の「特定電気通信設備」)を用いて本件サイトの閲覧を媒介し,または同サーバをこれら他人の通信の用に供する者(法2条3号の「特定電気通信役務提供者」)であるから,本件投稿に関し,法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する」と判断しています。

このように、エックスサーバーの提供するレンタルサーバー上で起きた権利侵害についてエックスサーバー株式会社は開示関係役務提供者に該当します。

エックスサーバー株式会社を相手方とする発信者情報開示請求訴訟の管轄は?

エックスサーバーは大阪に本社が所在するため、訴訟の場合は管轄が大阪地方裁判所となります。

大阪地方裁判所以外に管轄が認められる余地はありませんか

例えば、削除(送信防止措置)請求と併合提起したり、別のプロバイダ(大阪地裁以外が管轄になるプロバイダ)を共同被告とすることで、大阪地方裁判所以外に管轄が認められるケースがあります。

エックスサーバー株式会社を被告とする発信者情報開示裁判例はありますか?

エックスサーバー株式会社を被告とする発信者情報開示請求事件の裁判例が裁判所ウェブサイトに複数掲載されています。下記の裁判例では、いずれもエックスサーバー契約者の氏名、住所、メールアドレス(及び省令改正後は電話番号)の開示が命じられています。

令和2年11月10日大阪地方裁判所判決裁判所ウェブサイト掲載

本判決では、「本件発信者は,令和元年10月ころ,「Trenjyo」と題するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を構成するウェブページの1つである本件ウェブページに,訴外株式会社キーリー(以下「訴外会社」という。)の販売する「メモリッチ」という名称の美容クリーム(以下「第三者商品」という。)と,原告が販売す
る原告商品の価格,途中解約の可能性等について説明する本件各記載を掲載した…被告は,本件ウェブサイトが設置されたウェブサーバーの管理者であり,契約者情報として,本件発信者情報を保有している」と認定されています。

令和3年3月25日大阪地方裁判所判決裁判所ウェブサイト掲載

本判決では、発信者のエックスサーバー運営レンタルサーバー利用について、「本件発信者は,平成30年10月11日に閲覧用URLのドメイン登録を行い,同月12日以降,被告のレンタルサーバーを利用して,不登校生の家庭を支援することを目的に,本件投稿記事を本件ウェブサイトに投稿し,公衆が閲覧し得る状態にしている(甲3の1ないし63,甲4,5)」と認定されています。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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