京都造形芸術大学が京都芸術大学に名称変更をすることを巡って京都市立芸術大学との間で争訟となっていました。
※この紛争は2021年7月無事に和解が成立して平和的に解決したことが公表されています。名称を巡る争訟として示唆するものが多い事件だったと思いますが平和的な解決に落着し何よりでした。
また、大阪大学が、大阪府立大学と大阪市立大学を統合する大学名「大阪公立大学」の英語名称として予定されている「University of Osaka」について、声明を出しました。大阪大学の英語略称「OSAKA UNIVERSITY」と酷似しているという点を問題視しています。
このように、大学名をめぐって複数の紛争が生じています。大学名も名称、標識であり法的には商標法や、不正競争防止法上の知的財産権侵害とならないかが争われます。
紛争前から商標登録のある名称、紛争登録前に商標登録をしていなかった名称と商標法の保護が分かれています。また、京都市立芸術大学は、紛争後に商標登録を得ています。このように紛争後に商標登録を得た名称もあり、主体や時間の経過により名称の保護状況が様々です。
この点から、名称を巡る不正競争防止法による保護と、商標法による保護や商標権の取得時期による紛争に与える影響の対比をしやすい事案だと考えられます。
商標登録及びその時期は、紛争の経過や帰結を異ならせるのかなど注視すべき所が多い案件と考えられます。
弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、このように紛争の際に鍵となることもある商標に関するご相談やご依頼を受け付けておりますのでお気軽にご相談、お問い合わせください。
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Contents
京都芸大を巡る名称に係る紛争
京都造形芸術大学が京都芸術大学に名称変更をすることを巡って京都市立芸術大学との間で争訟となっていることが報道されています。
法人の「名称」は個人の「氏名」と並んで標識保護による保護対象としてもっとも基本的なものと理解されます。そのような名称を巡る紛争とあって、どのような法律的なフレームで主張反論がなされ、審理判断されるのか題材として意義のある事案と考えています。
京都芸術大学及び京都芸大の商標登録出願
京都芸術大学を巡っては、京都造形芸術大学が商標出願をし、これに1日遅れて京都市立芸術大学が商標出願をしました。この商標出願が紛争の契機のひとつとなったようです。
指定役務は、京都市立芸術大学が、41類「大学における教授,美術品の展示,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を指定し、類似群コードが「41A01」「 41C03」「 41E01」「 41E03」であるのに対して、京都造詣芸術大学においては、41類「大学における教授,美術の対話型鑑賞教育に関する資格又は認定の企画及び実施,美術の対話型鑑賞に関する知識の教授,大学における知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営又は開催,セミナー・シンポジウム・会議・講演会・研修会・研究会の企画・手配・運営又は開催に関する情報の提供,図書の貸与,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,書画の貸与」類似群コード「41A01」「 41A03」「 41C02」「 41E01」「 41E03」「 41E05」「 41K02」「 41M09」を類似群コードにしています。
また、京都造形芸術大学が京都芸術大学に名称変更をすることを巡って京都市立芸術大学との間で争訟となっていることを巡っては、京都市立芸術大学が『京都芸』大の商標を登録するために、出願しています。指定役務は、京都芸術大学と同じで、41類の「大学における教授,美術品の展示,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」類似群コードは、「41A01」「 41C03」「 41E01」「 41E03」となっています。
京都市立芸術大学の商標登録
商標「京都市立芸術大学」は、令和2年8月12日、無事に商標登録がされています。また、商標登録を受けて、商標権に基づく法的手続きが実施されています。
争訟の経緯
話し合いでは決着がつかず、京都市立芸術大学が訴訟を提起し、令和2年4月16日に第4回口頭弁論が予定されていたようですが、京都造形芸術大学は予定通り令和2年4月1日に名称を京都芸術大学に変更するなど、両者の間に未だ妥協点は見つかっていないようです(※)。
※その後2021年7月、大阪高裁において和解が成立したと報じられています。
この時、京都市立芸術大学は、訴訟の内容として、「「京都芸術大学」の名称を使用することの差し止め」としています。
ところで、京都芸術大学自体は、旧京都造形芸術大学が先に商標出願し、1日遅れて京都市立芸術大学が出願しているため、訴訟提起の時点ではまだ、商標登録自体はされていませんで下。
そこで、京都市立芸術大学の提起した訴訟は、不正競争防止法を大きな枠組みにしていたと考えられます。
すなわち、不正競争防止法2条1項1号の周知表示混同惹起行為や、不正競争防止法2条1項2号の著名表示冒用行為などが主張されていると考えられます。
不正競争防止法に基づく訴訟の判決
令和 2年8月27日大阪地方裁判所は、京都市立芸術大学の請求を棄却する判決を言い渡しました。
ところで上記のとおり、京都市立芸術大学は、取得した商標権に基づいて別途仮処分を申し立てています。商標権の取得によって結論が異なるのか、判断が注目される部分です。
当該判決を巡っては、弁護士ドットコムニュースさんにコメントさせていただいております。興味のある方はリンク先をご覧ください。
大阪高裁における和解成立
報道されているとおり、両大学間で和解が成立したとのことです。平和的な解決に落着して何よりでした。
下記のリンクのとおり、和解調書も公開されています。概ね、商標の取得状況に応じて提案された和解案に感じられるところです。このように、名称の保護は商標法の規律が重要となるという証左とも捉えられる事案となりました。
京都市立芸術大学の様々な視点からの大学名称に対する考え方
文化人類学、美術史、天文学・宇宙物理学などの視点から京都市立芸術大学の大学名称に関する考え方が明らかにされています。名称という標識法で重要な保護対象について、様々な学問の見地から保護の必要性を説くものであり、名称がなぜ保護されなければならないか幅広い理論づけをする試みとして、興味深い内容となっています。