著作権、著作者人格権の帰属

著作権及び著作者人格権は、誰に帰属するのでしょうか。

著作権帰属の原則

著作権及び著作者人格権は,著作者(著作権法2条1項2号)に帰属するのが原則です(著作権法17条1項)。著作者が著作権を享有することに何らの方式は必要とされません(同条2項)。

著作権帰属の例外

1 著作権共有

複数人の寄与を分離して利用することが出来ない表現物を、共同著作物と言います(著作権法2条1項12号)。共同著作物の著作権及び著作者人格権は,共同著作者で共有されます(民法264条準用)。2次的著作物が重畳的に著作権の客体になるのに対して,共有著作物においては1つの著作権を共有として享有します。

2 職務著作

ⅰ法人またはその他の使用者(法人等)のⅱ発意に基づきⅲ法人等の業務に従事する者がⅳ職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)においては,ⅴ法人等が自己の著作の名義の下に公表する場合、ⅵ作成の時における契約、就業規則その他に別段の定めがない限り,法人等が著作者となります(著作権法15条1項)。したがって、著作権及び著作者人格権は当該法人等に原始的に帰属することになります(著作権法17条)。

3 映画の著作物

ⅰ 原則

映画の著作物の著作者は,制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とされます(著作権法16条)。したがって全体的形成に創作的に寄与した者全員で著作権及び著作者人格権を共有することになります。

ⅱ 映画の職務著作

映画の著作物が法人等の発意に基づき,映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が全員法人等の業務に従事して職務上作成した場合で,法人等が自己の名義で当該映画の著作物を公表する場合,作成の時における契約や就業規則に別段の定めがない限り,法人等が著作者となります。したがって,その際は映画の著作物の著作権及び著作者人格権は当該法人等に原始的に帰属することになります(著作権法17条)。なお,映画の一部について法人等から独立して全体的形成に創作的に寄与した者がいる場合は,当該映画の著作物は法人等と独立して寄与した者の共同著作物になるものと解されます。

ⅲ 映画製作者

著作権法29条は「映画の著作物…の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する」と定めます。映画製作者とは,映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいいます(著作権法2条1項10号)。映画の著作物の製作発意とは,映画の著作物を製作する意思を有することを言い,責任を有するとは,製作に関する権利義務の主体となり経済的な収入支出の主体となることを言います。端的に言えば,経済的なリスクを負って映画製作する意思を有する者がいるときは,著作者がその製作者と製作に参加する約束をしていることを条件として,著作権が原始的に映画製作者に帰属することになります。この際,著作者人格権は著作者に帰属することから,原始的な権利の分属が生じることになります。

4 著作権の譲渡

著作権は、その全部又は一部を譲渡することができます(著作権法61条1項)。全部又は一部が譲渡された時は,著作権は著作権者から譲渡を受けた者に帰属することになります。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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