民事訴訟

民事上告審

「高等裁判所が第二審又は第一審としてした終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所に」上告を申し立てることが出来ます(民事訴訟法311条1項)。

上告の理由

「上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができ」ます(民事訴訟法312条1項)。

また、上告は、「次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができ」ます(民事訴訟法312条2項柱書本文)。

①法律に従って判決裁判所を構成しなかった場合に上告ができます(同項1号)。

②法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与した場合も上告事由とされます(同項2号)。

③日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反した場合も上告事由とされています(同項2号の2)。

④専属管轄に関する規定に違反したことも、原則的に上告事由となります(同項3号)。

⑤さらに、法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いた場合も上告事由となります(同項4号)。ただし、民事訴訟法第34条第2項(第59条において準用する場合を含む。)の規定による「追認があったときは、この限りで」ありません(同項柱書但書)。

⑥口頭弁論の公開の規定に違反したことも上告理由とされています(同項5号)。

また、⑦判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあることも、上告理由となります(同項6号)。

⑧さらに、例外的に、「高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができ」ます(民事訴訟法312条3項)。

上告提起の方式

上告は、上告状を原裁判所に提出して行います(民事訴訟法314条1項)。上告状には当事者、法定代理人(いる場合)、原裁判所判決の表示、及びその判決に対して上告をする旨を記載しなければなりません(民事訴訟法313条、286条2項)。

上告提起の際の提出書類

上告審では書面の提出期限も定められています。

上告状

上告審では、まず上告期間内(控訴審判決の送達を受けた日(の翌日)から2週間(民事訴訟法313条、同法285条))に上告状を提出しなければなりません。

(上告提起の方式等)民事訴訟法第三百十四条

1 上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならない。

2 前条において準用する第二百八十八条及び第二百八十九条第二項の規定による裁判長の職権は、原裁判所の裁判長が行う。

上告理由書

上告状に理由を書いた場合は格別、上告状に上告理由を記載しない場合は、次に上告理由書を提出しなければなりません。

(上告の理由の記載)民事訴訟法第三百十五条 

上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。

(上告理由書の提出期間・法第三百十五条) 民事訴訟規則第百九十四条 

上告理由書の提出の期間は、上告人が第百八十九条(上告提起通知書の送達等)第一項の規定による上告提起通知書の送達を受けた日から五十日とする。

期間は、上告提起通知書の送達を受けた日(の翌日)から50日間です。また、上告理由書が提出されてから事件が最高裁判所(地裁が控訴審裁判所の事件では高等裁判所)に送られることから、上告状、上告理由書の書面の提出先はすべて、原裁判所です。

(上告提起通知書の送達等) 民事訴訟規則第百八十九条 

1 上告の提起があった場合においては、上告状却下の命令又は法第三百十六条(原裁判所による上告の却下)第一項第一号の規定による上告却下の決定があったときを除き、当事者に上告提起通知書を送達しなければならない。 

2 前項の規定により被上告人に上告提起通知書を送達するときは、同時に、上告状を送達しなければならない。

3 原裁判所の判決書又は判決書に代わる調書の送達前に上告の提起があったときは、第一項の規定による上告提起通知書の送達は、判決書又は判決書に代わる調書とともにしなければならない。

上告提起通知書は、上告のあった後原裁判所から送達される書面です。つまり、上告状の提出(上告提起)から、少しタイムラグがあり、上告提起通知書が送達され、その日(の翌日)から50日以内に上告理由書を提出することになります。

(原裁判所による上告の却下)民事訴訟法第三百十六条 

1 次の各号に該当することが明らかであるときは、原裁判所は、決定で、上告を却下しなければならない。 一 上告が不適法でその不備を補正することができないとき。 二 前条第一項の規定に違反して上告理由書を提出せず、又は上告の理由の記載が同条第二項の規定に違反しているとき。 

2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

上告理由書の期限渡過のサンクションは重大で、上告自体却下され、手続きが最高裁判所(地裁が控訴審裁判所である場合は高裁)に送られることなく、終了となってしまいます。

ただし、即時抗告を行うことは可能です。

上告受理の申立て

上告理由が認められる場合は当然に上告を申し立てることが出来ます(権利上告)。これに対して、上記上告理由がない場合も、上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合は、裁量により上告事件として受理することが出来ます(民事訴訟法318条1項・裁量上告)。上告受理の申立は絶対的上告理由を理由として行うことは出来ません(同条2項)ので、絶対的上告理由を理由とする場合は、併せて上告を行います。また、上告理由は上告受理申立ての理由とはなりませんので、上告受理申立ての理由とは区別する必要があります(民事訴訟規則188条後段)。

上告受理申立ての方式

上告受理申立てにおいては、上告受理申立書を原裁判所に提出することになります(民事訴訟法318条5項、314条1項)。上告状には当事者、法定代理人(いる場合)、原裁判所判決の表示、及びその判決に対して上告受理を申し立てる旨を記載しなければなりません(民事訴訟法318条5項、313条、286条2項)。

上告受理申立書には、上告受理の決定を求める旨と、原審を破棄すべき旨を併記すべきことになります。前者は上告受理決定があれば要請が満たされ、さらに後者について審理判断を経ることになります。反面、前者の要請が認められず、上告を受理しない場合は、当然、後者は審理判断の俎上にも上がらないことになります。

上告受理決定

上告受理が決定された場合は、上告があったものとみなされます(民事訴訟法318条4項前段)。

被上告人・相手方の上告審

附帯上告

相手方から上告ないし上告受理申立があった場合、上告に対しては附帯上告が、上告受理申立に対しては附帯上告受理申立が出来ます。

附帯上告、附帯上告受理申立の期間は上告理由書提出期間との均衡から、上告提起通知書の送達日から50日とされています。

上告提起通知書の送達

被上告人は、上告が却下される場合を除いて上告提起通知書を送達されます(民事訴訟規則189条1項)。このとき併せて上告状も送達されます(同2項)。

さらに、上告裁判所に事件が送付された場合、上告却下の決定ないし上告棄却の決定をしない場合は、必要がない場合でない限り、上告理由書が送達されます(民事訴訟規則198条)。

附帯上告状等の提出機関

上告状の提出期間が上告提起通知書の送達日から起算されることとの均衡から附帯上告及び附帯上告受理申立も、上告提起通知書の送達日から50日以内に附帯上告状、附帯上告理由書、附帯上告受理申立書、附帯上告受理申立ての理由書を原裁判所に提出する必要があります。

上告審の審理

被上告人は上告審裁判所から、必要と認められるとき答弁書の提出を命ぜられることがあります。

答弁書等の提出がないときは上告理由書等に基づいて、答弁書等が提出されたときは答弁書等と上告理由書等に基づいて、書面審理を行い、上告に理由がないと判断するときは、正面審理に基づいて上告を棄却します。

書面審理によって上告を棄却しない場合は、原則的に口頭弁論が開催されます。

上告審の受任・ご相談について

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)は、リツイート事件などを含めて、民事上告審の取り扱い経験があります。

まずは、受任が適切な事案かについて、法律相談をお受けすることもできますので、お気軽に03ー6915ー8682か、下記メールフォームなどでお問い合わせください。

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    弁護士齋藤理央

    東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
    【経 歴】

    写真(齋藤先生)_edited.jpg

    大阪府豊中市出身

    早稲田大学教育学部卒業

    大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

    2010年    東京弁護士会登録(第63期)

    2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

    2021年    弁理士実務修習修了

    2022年    今井関口法律事務所参画

    【著 作】

    『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

    『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

    『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

    『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

    『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

    『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

    『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

    【セミナー・研修等】

    『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

    『リツイート事件最高裁判決について』

    『BL同人誌事件判決』

    『インターネットと著作権』

    『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

    『著作権と表現の自由について』

    【主な取扱分野】

    ◆著作権法・著作権訴訟

    ◆インターネット法

    ◆知的財産権法

    ◆損害賠償

    ◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

    【主な担当事件】

    『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

    『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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