民事訴訟

訴え提起前の証拠保全

裁判所が適切な争点および証拠の整理を行う前提として、当事者が必要な情報を得ている必要があります。そのため、当事者の情報収集を補助する制度の一つが、提訴前照会制度です(民事訴訟法132条の2第1項)。

ただし、相手方の利益も考慮し、照会が許されない場合も規定されています(同但書)。

もっとも、相手方が承諾すれば、本来照会が許されない場合でも、例外的に照会できる場合があります(民事訴訟法132条の2第2項)。

提訴前照会は提訴前の行為であるから、厳格に請求の趣旨、原因を記載する事までは求められません(同3項)。

照会期間は、4ヶ月であり、これを潜脱できないよう配慮されています(同4項)。

照会の相手方が返答した場合、相手方にも、照会権限を付与するのが公平とされています(民事訴訟法132条の3第1項)。

提訴前に当事者が適切な証拠を入手している事は、迅速な裁判の実現につながります。そこで、提訴前証拠収集処分により、当事者の証拠収集を裁判所が一定範囲で補助します(民事訴訟法132条の4)。

嘱託者の負担と、迅速な回答を志向し、回答期限を付されています(民事訴訟法132条の6第1項)。

回答は、保全できるよう(同4項)に書面が望まれています(同2項)。

証拠収集の請求は、必要な処分か判定するため、要証事実を明示して、する必要があります(同5項)。

収集された証拠資料は、裁判所が保有し、両当事者に公平に提供することになります民事訴訟法132条の7第1項)。

提訴前の当事者のための処分に過ぎないことから、不服申し立てはできません(民事訴訟法132条の8)。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事一覧

弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

お問い合わせ

    TOP