URLの意味とリンク及び公衆送信権

URLは、データですが、単なるデータではなくそれ自体通信プログラムの性質を有します。もちろん、プログラムをどのように定義するのか、という問題がありますが、URLそれ自体が、クライアントコンピューター、サーバーコンピューターに一定の挙動を要求する命令、すなわちプログラムとしての性質を有します。

このURLというプログラム、命令がサーバ送信されて初めてサーバ上のファイルはクライアントコンピューターに送信されます。

リンクの生成行為は、本来クライアント側で記述すべきURLという指令を、代わりに記述しておく行為という側面を有します。すなわち、クライアントがブラウザに記述すべきURLプログラムの記述行為を代替し、クライアントがクリックした際(ハイパーリンク)或いは、自動的に(インラインリンク)代替した通信プログラム(HTTP等)を起動させるプログラム(HTML等)を記述することに他なりません。

この行為、特にクライアントの行為を経ずにクライアントコンピュータに通信指令を発令させるインラインリンク生成行為について、どのように評価すべきかは、今後の裁判所の判断が待たれます。

このURLの記述行為は、インラインリンクであっても、送信可能化行為に該当するとは考えにくく、公衆送信行為に該当する可能性があるというのが、私見です。あるいは、公衆伝達行為に該当する可能性も考えられます。反面、HTMLや、CSSなど著作物の表示方法それ自体に変容を及ぼすプログラムの記述は、送信可能化権を侵害する可能性があるものと思料されます。

すなわち、クライアントコンピュータが送るべき通信プロトコルを予め記述し、これをクライアントの意思、行為に関わらずクライアントコンピュータに送信せしめる行為は、送信可能化された著作物を利用した公衆送信行為、或いは公衆伝達行為と評価されるべきものと思料されます。

或いは、仮に直接公衆送信行為等に該当しないとしても、公衆送信行為の幇助責任に問い得る行為である可能性は高いでしょう。ただし、幇助行為に過ぎないと判断された場合は、例えば発信者情報開示を経る必要がある場合などは、リンクを実現しているHTML及びそのパラメーターデータであり、かつそれ自体プログラムの性質を有するURLデータが、「侵害情報」に該当するのか、という論点が発生してくることになります。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事一覧

弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

お問い合わせ

    TOP