美術・写真の著作物と展示権

美術の著作物

著作者は、美術の著作物の原作品を公に展示する権利を専有します(著作権法25条)。自らは展示する権利を享有するとともに、第三者が美術の著作物の原作品を公に展示することを禁止することができます。公とは、特定かつ多数のものを含みます(著作権法2条5項)。多数とは何人であるかは、少し乱暴な言い方をすれば、ケースバイケースとされています。したがって、展示者に人的繋がりがある人物だけが対象でも、対象が多数であれば、公への展示と評価される場合があり得ます。たとえば、著作権者でなく、原作品の所有権も有さない者が自宅で開いた個人的なパーティーであっても、参加者が多数に上れば、美術の著作物の原作品を展示することが禁止される場合があります。

美術の著作物の著作権者でない者であっても、美術の著作物の原作品の所有者は、また、その同意を得た者は、美術の著作物を公に展示することができます(著作権法45条1項)。

ただし、美術の著作物の原作品の所有者やその同意を得た者であっても、街路、公園、その他一般公衆に解放されている屋外の場所や、建造物の外壁など一般公衆の見やすい屋外の場所に美術の著作物の原作品を展示することは許されません(同2項)。美術の著作物の原作品を一般公衆に解放されているか一般公衆のの見やすい屋外の場所に展示すると、一定の例外的な場合(著作権法46条各号)を除いて利用が許諾されてしまう(著作権法46条柱書)ことなどから、著作権に対する制約が大きくなりすぎるからです。

写真の著作物

写真の著作物の原作品についても、未だ発行されていない著作物については、著作権者が公に展示する権利を専有します(著作権法25条)。発行とは、その性質に応じ公衆の要求を満たす数量の複製物が、著作権法上の権利者乃至はその許諾を得た者により適法に頒布された場合を言います(著作権法3条1項)。

また、写真の著作物の原作品の所有者ないしは所有者の同意を得た者は、未だ発行されていない写真の原作品において著作物を公に展示することができます(著作権法45条1項)。写真の著作物は、原作品を一般公衆に解放されているか一般公衆のの見やすい屋外の場所に展示しても、広範な利用制限には服しませんので、写真の著作物の原作品の所有者等は、未だ発行されていない写真の著作物の原作品を一般公衆に解放されているか一般公衆のの見やすい屋外の場所に展示することも許されます。

展示に伴う複製

展示権を侵害することなく著作物を展示する者は、観覧者のために著作物の解説又は紹介を目的とする小冊子に著作物を掲載できます(著作権法47条)。この小冊子には、実質的に観賞用といえる水準の複製は出来ないものと解されています(判例)。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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