マリカー事件についてのコメント

マリカー事件についてはニュースメディアなどにコメントを複数回させて頂いております。その補足などをこちらの記事にまとめています。

マリオカートのフリーライドを巡って任天堂が訴訟提起(コメントの補足)

マリオカートを巡る問題で、コメントさせて頂きました。

その、コメントの補充記事です。

マリカーという標章について

マリカーという標章について、株式会社マリカーが権利者として商標登録がされており、任天堂から商標について異議申し立てがなされて、特許庁の出した結論としては商標維持とされています。つまり任天堂の異議申し立ては通らなかったという前提の事件経過があったようです。この異議申し立てが任天堂及びマリカーに通知されたのが、平成29年2月7日頃のようですので、商標登録に対する異議が認められなかったことが、訴訟提起の原因のようです。

異議が任天堂の商品、役務と混同を生じるおそれなどを元に出されていたのであれば、特許庁は、マリカーという標章だけでは混同は生じないと判断した可能性があります。マリオカートが中学生の頃に流行っていた世代なので、マリカーという略称に対する認識は特許庁の判断とはずれがあるのかもしれません。

いずれにせよ、特許庁の判断は訴訟にも少なからず影響を与えると思います。マリカーという標章だけでは、世間に任天堂が営業主と誤認させるだけの浸透はないという判断もあり得ると考えられます。

キャラクターのコスチュームについて

こちらも、アマゾンなどでも売られている1000円-2000円程度の正規品の可能性もあるようです。正規品であれば、コスチュームを再製したことについては、責任を問えません。もっとも、いずれにせよ、キャラクターコスチュームについては、著作物性が大きな争点の一つになることには変わりないでしょう。

また、正規品であれば、どのような利用までが明示、あるいは黙示に許されており、どのような利用が許されていないか、という問題も発生してくる可能性があります。正規品であれば、著作権侵害はやはり本質的ではなく、本質的問題は、任天堂の営業乃至、任天堂が正規に営業を許諾したアミューズメントという誤認を生じさせた部分が問題の本質になってくるのではないでしょうか。

キャラクターという商品等表示

このように、マリカーという標章も、キャラクターコスチュームも、双方切り離してみると、違法と言えるか微妙な判断が求められることになりそうです。

ただ、この問題の本質は、部分に切り分けて論じるべきものではなく、問題の本質は、マリカーという標章、マリオのコスチューム利用など全体として任天堂の提供役務との混同を生じさせる可能性があることだと考えられます。また、株式会社マリカー社においても、専門家のアドバイスを得ていたという声明はおそらく本当であり、マリカーという標章や、正規品のコスチューム利用という、部分部分の利用に問題をうまく切り離して、戦略的にギリギリの部分を責めていた感じもします。

そうすると、逆に任天堂社サイドとしては、部分部分に問題を分離せず、マリオなど超有名なキャラクターの場合だから成り立つという大前提があるのですが、キャラクターを媒介とした商品等表示の利用行為として、不正競争防止法違反を主張する法律構成が、問題の本質をもっとも正確に捉えている気がします。

コメントでも触れましたが、ポパイキャラクター事件の判例が参考になります。

マリカー事件中間判決についてコメントしました

弁護士ドットコムニュースに、マリカー事件中間判決に関するコメントをしました。

マリカー裁判、「コスプレ」同人イベントにも影響ある? 判決文を読み解く|弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_23/n_9832/

マリカー事件中間判決に関するツイート

マリカー事件中間判決は、判決の速報が報道された当初から関心を持っていました。

ただ、なかなか判決文にじっくり触れる時間もとれなかったので、今回はコメントするということである程度腰を据えて判決文を読む機会を得られてよかったと思います。

今回のコメントについて

一審、控訴審中間判決ともに100頁を超える判決書であるうえ、控訴審中間判決は一審判決を基本的に是としながら、ところどころ異なるところがあるので、少しわかりにくいコメントになっているかもしれませんが、耳目を引く事件で少しでも市民の皆様において、司法手続きや知的財産法制に関する理解を深めて頂ければ幸いです。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

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『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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