不正競争防止法の目的と手段
不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を実現し、また、事業者間の公正な競争を実施するために諸外国と締結された条約などの国際的な約束事を的確に実践することを第一次的な目的とし、手段として、不正競争の防止措置及び、生じてしまった不正競争行為に対する損害賠償に関する措置を定めることを宣明しています(不正競争防止法1条)。その究極的な目的は、国民経済の健全な発展に寄与する点にあります(同1条)。
このように不正競争防止法は、「不正競争」の防止措置と損害賠償に関する措置を、目的実現の手段として掲げています。この不正競争防止法にいう「不正競争」は、同法2条1項各号により16の類型に分類されて定義されています。同法2条1項各号により定められた「不正競争」行為は、不正競争防止法において、キーとなる概念の一つです。
不正競争防止及び損害賠償に関する措置
差止等請求権
不正競争によって、現に営業上の利益を侵害され、又は侵害される恐れがある場合、侵害の停止又は予防を裁判所に請求することができます(不正競争防止法3条1項)。また、侵害の停止又は予防を実行化するため、侵害行為を組成した物の廃棄や、侵害の行為に供した設備の除去などに例示される侵害の停止又は予防に必要な行為を侵害者に行うよう命ずることを裁判所に請求することができます(同2項)。
損害賠償請求権
故意または過失により不正競争行為を行い、他人の営業上の利益を侵害した場合、損害賠償の責を負います(不正競争防止法4条本文)。不正競争防止法4条本文は、民法709条に定められた不法行為の特則と解され不法行為に基づく損害賠償請求権の発生要件が特則たる本条により変容されています。もっとも、競業秩序を破壊する不正ないし不公正な行為は、不正競争行為に該当しないものでも、不法行為を構成し得ます(判例)。
損害額の推定
不正競争防止法2条1項1号~10号及び16号に掲げる不正競争行為に対しては、侵害行為組成物の譲渡数量に、被侵害者が侵害行為がなければ被侵害者の販売等能力によって販売できた物の単位数量あたりの利益の額を損害額とできます(不正競争防止法5条1項本文)。この場合、被侵害者が譲渡数量に至るまで販売することができない事情があれば、損害額算定に考慮されることになります(同1項但書)。
また、侵害者が利益を得ている場合は、その利益額は損害額と推定されることになります(同2項)。
不正競争防止法2条1項1号~9号及び13号又は16号に掲げる不正競争行為に対しては行為類型に応じて受けるべき対価相当の額を損害として賠償を請求することができます(同3項柱書)。すなわち、行為類型に対して被侵害者が設定しているサービス料などの対価相当額を損害として賠償を請求することができることになります。また、同3項による賠償額はこれを超える金額の請求を妨げません(同4項前段)。
損害額の認定
また、不正競争による損害賠償請求訴訟においては、損害額を立証するために必要な事実を立証することが事実の性質上極めて困難であるとき、裁判所において相当な損害額を認定できます(不正競争防止法9条)。民事訴訟においては、もとより、損害の発生が認められるものの損害額の立証が極めて困難であるとき、裁判所において相当な損害額を認定できます(民事訴訟法248条)。不正競争防止法9条は、さらに、損害額を立証するために必要な事実の立証が極めて困難な場合にも、裁判所による相当な賠償額の認定を拡張して認めています。
消滅時効等
不正競争防止法15条は、同法2条1項4号~9号の不正競争行為に対する差止等請求権について、侵害行為が継続する場合においても、侵害行為とその主体を知った時から3年間、差止等を請求しない場合差止等請求権は短期消滅時効により消滅すると定めます。また、侵害行為の開始から20年間経過した場合は除斥期間により、差止等請求権が消滅します。
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