携帯電話キャリアであるNTT docomo(ドコモ)に対する発信者情報開示について、情報を掲載しています。
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携帯電話キャリアの位置づけ
携帯電話キャリアは、インターネットサービスプロバイダとして携帯電話、スマートフォンからのインターネットアクセスを供給します。この時、IPアドレスなどの通信元を識別するための論理値を発行するため、IPアドレスとタイムスタンプから発信者を特定できる場合があります。
NTT docomo(ドコモ)の発信者情報開示の扱いの変更について
NTT docomo(ドコモ)は、これまで携帯電話のIPアドレスについて、ポート番号がなければ特定できないという扱いをしてきました。
しかし、令和2年12月1日より取扱を変更し、これまで接続先URLを取得していなかったSSL通信についても接続先URLなどから、通信ログを特定する運用に変更するとのことです。また、この運用変更は令和2年12月1日から93日間遡って適用があるため、令和2年9月以降のアクセスログについては、接続先URLからアクセスを特定できる可能性があることになりました。
この点については運用変更直後でまだ詳しい運用状況は明らかでない部分もありますが、新しい運用の詳細が判明すれば公開できる範囲でお伝えします。
NTT docomo(ドコモ)に対する発信者情報開示の特徴
ポート番号
NTT docomo(ドコモ)に対する発信者情報開示の特徴は、ユーザーが多く同じIPアドレスを同時に複数のユーザーに割り振っているため、基本的にポート番号がわからないと発信者を特定できない点です。
しかし、これまで対応していなかったSSL通信時についても、接続先URLからアクセスを特定できる運用が令和2年12月1日から開始されるなど、取扱は変化しています。
送信時URL
平成20年 9月 9日東京地裁判決(平成20年(ワ)278号発信者情報開示請求事件)は、NTTdocomo(ドコモ)に対する発信者情報開示について、 IPアドレスとタイムスタンプだけではなく送信時URLが必要とされた事案です。
すなわち、「原告は,本件書込は原告の名誉や信用を毀損するものであるとして,本件ブログを運営する訴外サイバーエージェントを債務者として,本件書込をした発信者(以下「本件発信者」)に関する情報の開示を求める仮処分命令を申し立てた」ところ、「この第一次仮処分において,訴外サイバーエージェントは,平成19年9月20日,原告に対し,本件発信者の情報として,インターネットに接続された個々の電気通信設備(本件書込を発信したパソコンや携帯電話等,以下「携帯電話等」)を識別するために割り当てられた番号であるIPアドレス(以下「本件IPアドレス」)と,このIPアドレスを割り当てられた携帯電話等から訴外サイバーエージェントの電気通信設備(本件ブログを記録し管理しているウェブサーバ等,以下「サーバ等」)に送信された年月日及び時刻(以下「本件タイムスタンプ」)の情報が別紙「アクセスログ目録」1,2に記載のとおりであることを開示し」ました。
さらに、「インターネット上でIPアドレス等の所有者を検索する専用ソフト(WHOIS)を用いて訴外サイバーエージェントから開示された本件IPアドレスを検索したところ,本件IPアドレス…は,被告が所有しているIPアドレスであり(甲4),本件発信者が訴外サイバーエージェントの管理する本件ブログに本件書込をした際にインターネット接続サービスを提供したプロバイダ(以下「経由プロバイダ」)は被告であることが判明し」ました。
これを受けて,平成19年9月21日,NTT docomo(ドコモ)たる、「被告を債務者として発信者情報消去禁止の仮処分命令を申し立てたが(東京地方裁判所平成19年(ヨ)第3654号,以下「第二次仮処分」),被告は,本件IPアドレスと本件タイムスタンプだけでは必ずしも発信者を特定することはできず,本件書込が訴外サイバーエージェントの管理する本件ブログに送信された際のURLも必要であると主張し」ました。
「再び訴外サイバーエージェントを債務者として本件書込がなされた際のURLの開示を求める仮処分…を申し立てたところ,同年12月4日,訴外サイバーエージェントから原告に対して,本件発信者に関するURLとして開示されたものが,別紙「アクセスログ目録」3に記載のとおりのURL(以下「本件URL」)で」した。
そこで、NTTdocomo(ドコモ)たる「被告に対して本件IPアドレスと本件タイムスタンプに加えて本件URLを示したところ,被告は,同月5日になってようやく,本件タイムスタンプの日時に,本件IPアドレスを割り当てられた携帯電話等から,被告の通信回線を利用して訴外サイバーエージェントから本件URLを付されて本件ブログに通信を行った者(被告の通信回線を利用した契約者)の住所,氏名等に関する情報を保有していることを明らかにした」という事案です。
このように、NTTdocomoは動的に割り当てるIPアドレスを同時に複数人に割り当ており、ポート番号か、送信元のURLがなければ発信者を特定できないと言われています。
開示方針
下記裁判例のように令和2年ころからドコモを被告とする発信者情報開示請求事件の裁判例が増加しており、他の携帯電話キャリアと足並みを揃えるように近年開示に対して態度を硬化させています。
また、ドコモなどモバイルの動的IPアドレスの場合、接続先IPアドレスなどがわからないと原則的に通信を特定できないという理解のもと、開示以前に発信者を特定できていないという前提で、開示できない(開示すべき情報に至っていない)という返答となります。
NTT docomo(ドコモ)に対する発信者情報開示訴訟の例
平成22年 4月26日東京地裁判決(平21(ワ)29641号 発信者情報開示請求事件)
表題の裁判例は、NTT docomo(ドコモ)に対して、1FOMAカード個体識別子に係るFOMAサービスの契約者の氏名若しくは名称並びに住所、2FOMAカード個体識別子に係るFOMAサービスの契約者の電子メールアドレスの開示が請求された事案です。
FOMAサービス契約者の情報
裁判所は、この事案において、「FOMAカード個体識別子に係るFOMAサービスの契約者の氏名又は名称及び住所(別紙発信者情報目録1)は,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令(平成14年総務省令第57号)1号又は2号に該当するから,本法4条1項の「発信者情報」に該当すると解するのが相当である」として、氏名及び住所について発信者情報開示を認める判断をしています。
これに対し,「FOMAカード個体識別子に係るFOMAサービスの契約者の電子メールアドレス(同目録2)は,上記総務省令3号の「発信者の電子メールアドレス」には該当しなから,本法4条1項の「発信者情報」には該当しないと解するのが相当である」として、電子メールアドレスの開示は認めませんでした。
令和2年9月24日東京地方裁判所判決・裁判所ウェブサイト掲載
著作権侵害に基づく発信者情報開示請求事件です。
「原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者が,インター ネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する別紙写真目録の写真(以下「本件写真」という。)を掲載し原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害した ことが明らかであるなどと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の 制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づ き,上記著作権の侵害に係る発信者情報である別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求め」た事案でした。
裁判所は、「証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件投稿者に対し,著 作権(複製権,公衆送信権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求 をする意思を有していることが認められるところ,原告が損害賠償請求権を行 使するためには,発信者を特定する別紙発信者情報目録記載の各情報について 開示を受ける必要があるといえ,その開示を受けるべき正当な理由があると認めることができる」などとして、ドコモ側が開示の必要性がないと反論したメールアドレスを含めた発信者情報の開示を認めました。
NTTdocomo(ドコモ)に対する発信者情報開示の方針
以上から、任意で発信者情報開示を行うか、あるいは弁護士会照会などを通して、発信者を特定する方針が考えられます。また、令和2年ころからドコモを被告とする発信者情報開示請求事件の裁判例が増加しており、近年開示に対して態度を硬化させています。
弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)の発信者情報開示請求業務
弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)では、NTTdocomo(ドコモ)を含めた携帯電話キャリアに対する情報開示の取り扱い実績がありますので、お気軽にご相談ください。