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弁護士費用の源泉徴収について

所得税法204条1項柱書は、「居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない」と定め、同2号は、「弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、…その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金」と定めます。

したがって、所得税法204条1項柱書及び同2号により、原則的に弁護士報酬については、源泉徴収義務が発生します。

しかし、弁護士報酬に対する源泉徴収義務は下記の条件により免除されます。
すなわち、所得税法204条2項柱書は、「前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない」と定め、同2号は、「前項第1号から第5号まで並びに第7号及び第8号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第183条第1項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの」と定めています。
このように、「個人」は原則的に源泉徴収義務を免れることになります。

ただし、「第183条第1項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」については、源泉徴収義務を免れません。そして、所得税法183条1項は、「居住者に対し国内において第28条第1項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において『給与等』という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない」と定めます。そして、所得税法28条1項は、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において『給与等』という。)に係る所得をいう」と定めます。

このように、使用人(2人以下の家事使用人を除く(所得税法184条))を雇い、給与等を支払う個人は、弁護士費用に対しても、源泉徴収義務を免れません。よって、自営業主で人を雇っている方や、法人のお客様は、弊所にお支払いいただく弁護士費用に対して源泉徴収義務が課せられますのでご注意ください。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

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大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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