ポパイキャラクター事件におけるキャラクターと不正競争防止法違反判示部分

キャラクターを媒介とした、混合惹起行為、著名表示冒用行為が認められるのか、という問題があります。この点、ポパイのキャラクターが商品等表示にあたると判断した下記判例が参考になります。

同判例において、キャラクターという抽象概念について、商品等表示として不正競争防止法による保護が示唆されています。もっとも、不正競争防止法を適用してキャラクターを保護するという保護アプローチの性質上、相当程度に有名なキャラクターの保護を図る場合にのみ保護手法として実効的である点に、注意が必要です。下線及び、個人名の省略は弊所によります。

平成 2年 2月19日東京地裁判決(昭59(ワ)10103号著作権侵害差止等請求事件(ポパイキャラクター事件))(およびこれを概ね引用する平成 4年 5月14日東京高裁判決 (平2(ネ)734号 ・ 平2(ネ)2007号 著作権侵害差止等請求控訴、附帯控訴請求事件(ポパイキャラクター事件控訴審)))

 

(一) 本件漫画は、その一部が昭和三四年六月から同四〇年七月までの間、毎週日曜日の夜七時三〇分から八時まで、TBSテレビから、当初は一〇局以上、後には二〇局以上のネットワークで全国的にテレビ放映され、平均で三〇パーセント、高いときで四〇ないし五〇パーセントの高視聴率を挙げた
(二) (1)株式会社不二家は、右のテレビ放映のスポンサーであったが、本件漫画の人気が非常に高かったことから、昭和三五年ころ、原告キングフィーチャーズから本件著作権について独占的利用権の設定を受けていた原告ハーストと本件漫画の使用許諾契約を締結し、ポパイのキャラクターをチューイングガムやキャラメル等に使用して売出したところ、爆発的な売行きを示し、その結果、原告ハーストと本件漫画の使用許諾契約を締結する企業が急増した。(2)Xは、原告ハーストが日本を含む極東地域において本件漫画の使用許諾契約を締結するについての代理権を有している者であって、日本における本件漫画の使用許諾契約の相手方の選択を一任されていたのであるが、本件漫画の使用許諾契約を締結する相手方としては、商品の品質が優れており、代表者に熱意がありポパイのキャラクターを大切にしてくれる企業のみを選択する方針で、数多くの企業の中から一業種につき一社を原則としてライセンシーを厳選して、原告ハーストと使用許諾契約を締結させ、また、本件漫画について使用許諾契約を締結したライセンシーには、その商品に、「by King Features Syndicate, Inc. 」等と明記させたうえ、原告らのライセンシーであることを示す所定の証紙を貼らせて、原告ハーストからライセンスを受けている企業の商品であることを明示させ、かつ、許諾を受けずにポパイのキャラクターを商品に使用する者がいた場合には、これに対して、直ちに警告書を発送して、その使用を中止させ、謝罪広告等の措置を採らせるなどして、ポパイのキャラクターを使用した商品の品質を維持し、原告ハーストからライセンスを受けている企業の商品表示としてポパイのキャラクターを管理し保護育成してきた。その結果、原告ハーストは、昭和四五年ころには、別紙第三目録記載の企業一五社との間において、同目録記載の商品について本件漫画の使用許諾契約を締結するに至り、更に、昭和六〇年二月ころには、株式会社福助、シチズン商事株式会社等三三社との間においても、本件漫画の使用許諾契約を締結している。(3)Xは、原告ハーストから委ねられている日本における本件漫画の商品化事業に必要な業務を遂行するために、原告アメリカンフィーチャーズを設立し、自ら同社の代表取締役となって、原告アメリカンフィーチャーズをして日本における商品化事業に必要な業務、すなわち、前述の使用許諾契約締結の相手方の選択と原告ハーストとの同契約締結の媒介、ポパイのキャラクターの管理及び保護育成のほか、ライセンシーからのロイヤルティーを集め、これを原告ハーストに送金する業務も逐行させている。なお、原告アメリカンフィーチャーズは、原告ハーストに送金する際には、右業務に対する自己の手数料を差引いた金額を原告ハーストに送金している。<br>
(三) 右(一)、(二)認定の事実によれば、ポパイのキャラクターは、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとポパイのキャラクターの使用許諾を受けている企業のグループの商品であることを示す表示として、遅くとも昭和四五年以降においては、日本国内において広く認識されていたものと認めるのが相当である。<br>
(四) 被告らは、ポパイのキャラクターの著名性は、不正競争防止法が保護している商品の出所表示機能とは異なるものである、すなわち、取引者又は需要者は、「ポパイの商品」を「ポパイの絵柄のついた商品」と認識しているだけで、「ポパイの絵柄のついた商品は、特定の者の製造販売に係る商品」と認識しているわけではない旨主張するが、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズは、ポパイの漫画を無断で使用する者に対し、警告書を発する等厳格に対処する一方、原告ハーストのライセンシーには、その商品に原告らのライセンシーであることを示すために証紙を貼らせ、かつ、「by King Features Syndicate, Inc. 」等と表示させ、原告ハーストからライセンスを受けている企業の商品であることを明示させていることは、前認定のとおりであって、右認定の事実によれば、ポパイのキャラクターが漫画として著名であるだけでなく、本件漫画の著作権者からライセンスを受けている企業を含む前示グループの商品表示としても著名であることを示すものである。また、被告らは、原告ハーストのライセンシーは、個々に異なるポパイの絵や文字を、ときには商標的に、ときには装飾的に、全く野放図に使用しているだけであり、取引者又は需要者も、単に右表示を本件漫画の主人公であるポパイとしてのみ認識し、その嗜好ないし趣味感から商品を購入しているにすぎない旨主張するが、たとえ、原告ハーストのライセンシーが、ポパイの絵を種々の表情、姿態でその商品に表示していたとしても、それが本件漫画の主人公であるポパイの絵であると認識しうる限り、取引者又は需要者は、その商品をポパイの商品表示が付された商品と認識しうるのであるから、原告ハーストのライセンシーが使用しているポパイの絵が図柄として統一されていないとしても、その図柄は商品表示としての出所表示機能を有しないものということはできない。更に、被告らは、Xは、少なくとも昭和五一年二月二四日に言渡された大阪地方裁判所の旧ポパイ事件(一)の判決以降、ポパイ又はPOPEYEの文字について、商標的な使用はしないように各ライセンシーに対し指導してきている旨主張するところ、〈証拠〉によれば、Xは、旧ポパイ事件(一)の判決以降、原告ハーストのライセンシーに対し、ポパイ又はPOPEYEの名称をポパイの絵と併用して使用し、これを単独では使用しないように指導し、ライセンシーも概ねこの指示に従っていることが認められるが、右認定の事実によれば、原告ハーストのライセンシーは、ポパイの絵及びその絵と併用してポパイ又はPOPEYEの文字を使用しているのであるから、ポパイ又はPOPEYEの文字の単独での使用を控えているからといって、ポパイのキャラクターの商品表示としての周知性が否定されるべき理由はない。更にまた、被告らは、原告ハーストのライセンシーは、ポパイのキャラクターに加えて、他の商標も使用しており、このような商標については、各ライセンシー間で統一的な使用がされておらず、この点からも、ポパイのキャラクターについて出所表示機能は生じえない旨主張するが、仮に、他の商標も使用されているとしても、一つの商品に複数の商標が使用されるのは決して珍しいことではなく、しかも、その場合でも、それぞれの出所表示機能を有するのであるから、同一商品に他の商標も使用されているということは、ポパイのキャラクターが出所表示機能を有しないとする根拠とはなりえない。なお、被告らは、原告らのライセンシーは、異業種の多数社に及び商品の種類は多岐にわたり、一定の商品との間に出所関連性を生じる余地はない旨主張するが、たとえ、ポパイのキャラクターが異業種の多数社に及び商品の種類が多岐にわたっているとしても、ポパイのキャラクターは、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとポパイのキャラクターの使用許諾を受けている企業のグループの商品表示として周知性を取得していること前認定のとおりであって、原告らのライセンシーが異業種の多数社に及び商品の種類が多岐にわたっていることが、ポパイのキャラクターの出所表示機能を減殺するものとは認められない。なおまた、被告らは、原告ハースト主張のライセンシーグループを構成する個々のライセンシーは、倒産等の理由でたびたび変動しており、各ライセンシー間の結合も希薄で、商品化事業に係る各ライセンシーの取り扱う商品全体とポパイのキャラクターとの間に商品の出所関連性が生じる余地はない旨主張するところ、〈証拠〉によれば、原告ハーストのライセンシーであった株式会社シャポーハウス三矢は、昭和五八年八月一一日に不渡手形を出して事実上倒産し、他にライセンシーが変わっていること、同じくライセンシーであったラパン・トレーディング株式会社は、昭和五八年七月七日、大阪地方裁判所より破産宣告を受け、その後他にライセンシーが変わっていること、更に、原告ハーストのライセンシーであったコンセプト株式会社も不渡手形を出し、現在は廃業していること、以上の事実が認められるが、たとえ、右のようにライセンシーを構成する個々の企業に変動があったからといって、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとポパイのキャラクターの使用許諾を受けているライセンシーのグループが解体するということでもない限り、右グループの取り扱う商品とポパイのキャラクターとの間の商品の出所関連性が失われるものとは認められないところ、原告ハーストのライセンシーは、前認定のとおり、昭和四五年においては一五社、同六〇年においては三三社もあったのであるから、右に認定した程度のライセンシーの変動があったとしても、現に、ポパイのキャラクターは、右グループの商品表示として周知性を有しているとの前認定が左右されるものとは認められず、したがって、被告らのいうように、商品の出所関連性が生じる余地がなくなったということはできない。なお更に、被告らは、原告アメリカンフィーチャーズは、商品化事業に必要な諸活動をなしうる人的体制を備えておらず、現実に右活動を行っているのは、X個人であって、ポパイのキャラクターの商品化事業の場合、集団的な管理体制が明らかではなく、統率がとれておらず、また、Xは、小売段階の吊り札、織ネームにおけるポパイのキャラクターの使用態様については、指導監督を一切行っておらず、ライセンシーに任せている状況にある旨主張するが、原告原告アメリカンフィーチャーズはXを代表者として、ポパイのキャラクターの使用許諾業務を行っていること、X及び原告アメリカンフィーチャーズは、ライセンシーには許諾商品であることを明示させ、かつ、無断でポパイのキャラクターを使用する者に対しては、これに厳しく対処し、これによりポパイの商標を管理し保護育成してきたことは、前認定のとおりであって、ポパイのキャラクターについて集団的な管理体制が明らかでなく、統率がとれていないということはできず、他に被告らの右主張事実を認めるに足りる証拠はない。もっとも、〈証拠〉によれば、X及び原告アメリカンフィーチャーズは、ライセンシーの小売段階におけるキャラクターの具体的な使用態様についてまでは十分に調査し把握していないことが認められるが、そうであるからといって、ポパイのキャラクターが商品表示として周知であるとの前認定が左右されるものとは認められない。また、被告らは、ポパイのキャラクターのライセンサーは、原告ハーストだけではなく、同原告の外にも、パラマウント及びウォルトディズニーがあり、同社より許諾を受けた日本のライセンシーの商品が現実に市場に出回っているのであって、ポパイのキャラクターを使用した商品は、必ずしも原告ハースト及びそのライセンシーのグループの商品と連想されるものではない旨主張するところ、〈証拠〉によれば、原告キングフィーチャーズは、右両社に対し、ポパイのキャラクターの利用権を与え、右両社は、日本において、久米繊維工業株式会社に対し、ポパイのキャラクターの使用についてサブライセンスを与え、同社は、トレーナー等にポパイのキャラクターを使用してこれを販売したが、このように原告ハーストと異なる会社からもライセンスがされ、業界に混乱が生じたので、約一年位でパラマント及びウォルトディズニーによるライセンス業務は中止されたことが認められ、右認定の事実によれば、パラマント及びウォルトディズニーによるライセンスは、短期間で中止されたのであるから、被告ら主張の事実は、ポパイのキャラクターが原告ハーストらを中核とする同原告らとライセンシーのグループの商品表示として周知であるとの前認定を左右するものではない。更に、被告らは、仮に、ポパイのキャラクターが原告らの商品表示として周知性を獲得したとしても、ライセンシーによるポパイのキャラクターの使用の多くは、右周知性獲得前に商標登録出願された本件商標権を侵害する態様でなされたものであり、そのような表示は、不正競争防止法による保護を受けえないと主張するが、商標法二九条は、「商標権者は、指定商品についての登録商標の使用がその使用の態様により……その商標登録出願前に生じた他人の著作権と抵触するときは、指定商品のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。」と規定しており、そして、〈証拠〉によれば、本件商標権は、昭和三三年六月二六日に商標登録出願されたものであることが認められ、これに対して、本件著作物の第一作は、アメリカ合衆国において一九二九年一月一七日に公表され、その後連続して公表され続けていることは、前第一、一の認定のとおりであるところ、〈証拠〉により認められる本件商標と被告図柄(六)とを対比すると、被告図柄(六)は、本件商標と同一の商標と認められるが、被告図柄(六)のポパイの絵の部分が本件著作物の複製と認められることは、前認定のとおりであって、本件商標のうち少なくともその絵の部分は、本件著作権に抵触するものであるから、商標法二九条によりこれを使用することができず、ひいては、本件商標権に基づく禁止権は、本件著作権に基づく本件著作物の利用に対しては及ばないものといわざるをえず、したがって、本件著作権について独占的利用権を有する原告ハーストからライセンスを受けたライセンシーグループによるポパイのキャラクターの使用は、本件商標権を侵害するものではないというべきである。以上のとおりであって、被告らの主張は、すべて採用することができない。<br>
2 次に、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズは、本件ロゴタイプは、遅くとも昭和五六年ころには、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの商品化事業を示す表示、すなわち、同原告らとライセンシーのグループの商品表示として、また、原告マガジンハウスの商品表示として、わが国において広く認識されるに至った旨主張するので、審案するに、別紙第二目録(三)によれば、本件ロゴタイプは、POPEYEの文字に白抜きのハイライトを付したものであって、POPEYEの文字に装飾を付したものであることが認められ、また、〈証拠〉によれば、原告マガジンハウスは、原告ハーストのライセンシーとして、その雑誌の題号に本件ロゴタイプを使用し、更に、原告ハーストのその余のライセンシーも、ポパイの絵と一緒に本件ロゴタイプをその商品に使用していることが認められる。右認定の事実によれば、原告ハーストのライセンシーは、本件ロゴタイプを本件漫画の主人公であるポパイを指すものとして使用しているものであって、それ以外の意味を有するものとして使用しているものでないことは明らかであり、かつ、ポパイのキャラクターは、前認定のとおり、原告ハーストらを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの商品表示として、遅くとも昭和四五年には、日本国内において広く認識されていたものであるから、本件ロゴタイプは、単に右周知の商品表示の一態様を構成する特定の装飾的な字体の文字として、その後に追加されたものにすぎないものであるから、これをもってポパイのキャラクターとは別個独立の周知の商品表示であると認めることは困難であるというほかはない。したがって、本件ロゴタイプは、原告ハーストらを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの周知の商品表示の一態様であるとはいえても、それとは別個独立の原告マガジンハウスの商品表示であると認めるのは相当ではない。<br>
二 第一、二に認定したところによれば、被告○○らは、被告図柄(一)ないし(四)を付した腕カバーを、被告○△らは、被告図柄(五)を付したマフラー及び被告図柄(五)又は(六)を付したネクタイを販売するおそれがあるものと認められる。<br>
三 被告図柄(一)、(二)、(四)、(六)のポパイの絵及び被告図柄(一)ないし(六)におけるポパイ又はPOPEYEの文字が、前認定の周知の商品表示であるポパイのキャラクターを意味するものであることは明らかであるから、被告図柄(一)ないし(六)は、いずれもポパイのキャラクターと同一ないし類似の図柄であると認められる。<br>
四 前三認定のとおり、被告図柄(一)ないし(六)は、いずれも原告らの周知の商品表示であるポパイのキャラクターを意味するものであるから、被告らが被告図柄(一)ないし(六)のいずれかをその商品に付して販売した場合、被告らが販売している商品は、原告ハースト及び原告アメリカンフィーチャーズを中核とする、同原告らとライセンシーのグループの商品であると誤認混同されるおそれがあるものと認められる。<br>
五 前説示のとおり、商品の出所について混同のおそれがある以上、特段の事情がない限り、ポパイのキャラクターのライセンサーである原告ハースト及び日本におけるポパイのキャラクターの管理業務を行っている原告アメリカンフィーチャーズは、被告らの行為により営業上の利益を害されるおそれがあるものというべきところ、右特段の事情を認めるに足りる証拠は存しない。<br> 被告らは、不正競争防止法一条一項一号の規定により保護されるのは、商品の製造販売等の業務に従事する商品主体であることを要するところ、原告アメリカンフィーチャーズは、ポパイの漫画が付された商品の製造販売の業務に従事する者ではなく、また、自己の名において商品化事業を営むものでもないから、同規定により保護される主体とはなりえない旨主張するが、不正競争防止法一条一項一号の規定に基づき差止めを請求しうる者は、営業上の利益を害されるおそれのある者であれば足りるところ、原告アメリカンフィーチャーズは、前認定のとおり、原告ハーストの日本における代理人であるXの手足となって、日本においてのポパイのキャラクターを管理し、保護育成することをその業務として遂行し、その業務について原告ハーストから対価を受領しているのであるから、同法条にいう営業上の利益を害されるおそれのある者に当たることは明らかである。また、被告らは、ポパイのキャラクターの商品化権許諾業務において、ライセンシーの選別、ポパイのキャラクターの使用態様のチェックや品質管理を含めた業者の指導、監督及び広告活動並びにロイヤルティーの集金等を中心となって行っているのは、原告ハーストの極東代表であるX個人であって、原告アメリカンフィーチャーズではなく、また、原告アメリカンフィーチャーズは、Xが代表を勤める会社として、その指示に従って行動するだけであって、独自の立場からポパイのキャラクターの商品化事業を行うものではなく、不正競争防止法によって保護を受ける周知商標の使用につき固有かつ正当な利益を有するもとのではないと主張するが、原告アメリカンフィーチャーズがポパイのキャラクターの商品化事業に必要な業務を逐行していることは、前認定のとおりであり、他の被告らの主張事実を認めるに足りる証拠はなく、また、Xは、原告アメリカンフィーチャーズの代表者であるから、同社がXの指示に従って行動するとしても、それは、同社の業務として行動することを意味し、したがって、同社が営業上の利益が害される者に当たらないとすることはできない。更に、被告らは、原告アメリカンフィーチャーズの活動は、原告ハーストの単なる手足としての活動にすぎず、法的には、原告アメリカンフィーチャーズ固有の活動とみられるべきものではないとして、原告アメリカンフィーチャーズが契約書に署名することはないこと、新聞紙上を通じて謹告等を掲載するに当たっても、掲載行為の主体は、原告アメリカンフィーチャーズではないことなどを主張するが、原告アメリカンフィーチャーズが、ポパイのキャラクターの商品化権許諾業務について、契約書や新聞での謹告等の掲載の名義人となっていないからといって、原告アメリカンフィーチャーズのライセンス契約締結に関する媒介行為、ポパイのキャラクターの管理行為等が、法的には、原告アメリカンフィーチャーズ固有の活動とみられるべきものではないとする根拠はないから、被告らの右主張事実を理由として、原告アメリカンフィーチャーズが営業上の利益を害される者に当たらないということはできない。更にまた、被告らは、原告アメリカンフィーチャーズが、商品化事業に必要な業務について対価を得ているとしても、右は、原告アメリカンフィーチャーズの業務活動に対する原告ハーストから得られる利益にとどまり、原告アメリカンフィーチャーズが得ている対価は、代理店(媒介代理商)手数料に類似するものであり、その収入の減少は、原告ハーストの営業成積が低下することによって反射的に生じるものであって、自らの営業上の利益が害された結果によるものではない旨主張するが、前認定のとおり、原告アメリカンフィーチャーズは、ポパイのキャラクターの商品化事業の逐行に必要な諸活動をなし、その対価として収入を得ているのであるから、被告らの行為がポパイの商品化事業に対し悪影響を持つ以上、原告アメリカンフィーチャーズも、原告ハーストと同様に被告らの行為により営業上の利益を害される者に当たるものということができる。なお、被告らは、原告ハーストとの契約に基づいて商品化事業における最も重要な諸活動の任に当たっているのは、X個人であるところからみて、右対価を受け取るべき者はX個人であると考えられるところ、原告ハーストとXは、税法上の対策から、単に右対価の受取人を原告アメリカンフィーチャーズとする契約を交わしているにすぎないものと解される旨主張するが、原告アメリカンフィーチャーズが、被告ら主張のように、単に形式上存在するだけであり、何ら企業としての実体を備えていないとする事実を認めるに足りる証拠はない。以上のとおりであって、被告らの主張は、すべて採用しえないものである。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

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大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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