著作権法47条の2は,インターネット上で行う美術又は写真の著作物の売買などを適法化するための規程です。つまり、アフィリエイトや商品紹介で作品を表示した場合も一定の範囲で当該利用を適法化することができる規定です。
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著作権法47条の2はどのような条文ですか?
平成21年度の法改正で導入された条文であり,インターネット上の通信販売で商品紹介用の画像をウェブサイトに掲載することが,複製権及び公衆送信権の侵害に当たるという議論に立法的に解決を示しました。以下,条文を引用します。
著作権法第四十七条の二 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。 |
著作権法47条の2はどういった場面に適用されますか?
上記が,著作権法四七条の二の条文です。条文上明らかなとおり,美術の著作物又は写真の著作物に限定されています。したがって,小説や漫画などについて,表紙を画像としてウェブサイトなどに掲載することは出来ますが,作品の内容や台詞をコピーして商品紹介の用に供することは引用などの条件を満たさない限り,出来ません。
上記の条文には,譲渡・貸与の権限を有する者の他,「委託を受けた者」も複製・公衆送信が出来ることとされています。つまり,所謂アフィリエイトなどのための商品紹介画像にも著作権法四七条の二が適用されることになります。
政令で定める措置とはどのような措置ですか?
もっとも著作権法四七条の二は,どのような複製・公衆送信をも許す趣旨ではなく,条文上にある「政令で定める措置」を講じる必要があります。上記条文中の「政令」は,著作権法施行令第七条の二を指しています。
以下、政令の定めを引用します。
著作権法施行令第七条の二 法第四十七条の二 (法第八十六条第一項 及び第三項 において準用する場合を含む。)の政令で定める措置は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める措置とする。 一 法第四十七条の二 (法第八十六条第一項 において準用する場合を含む。)に規定する複製 当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさ又は精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること。 二 法第四十七条の二 (法第八十六条第三項 において準用する場合を含む。)に規定する公衆送信 次のいずれかの措置 イ 当該公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること。 ロ 当該公衆送信を受信して行う著作物の複製(法第四十七条の八 の規定により行うことができるものを除く。)を電磁的方法(法第二条第一項第二十号 に規定する電磁的方法をいう。)により防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに送信する方式によるものを用い、かつ、当該公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が文部科学省令で定めるイに規定する基準より緩やかな基準に適合するものとなるようにすること。 |
上記条文の構造は,おおまかにいって一号において複製の場合を,二号において公衆送信の場合を規定し、それぞれ複製及び公衆送信の際に守るべき基準の定立を著作権法施行規則に委任にしています。当該委任を受けた文部科学省令が,下記著作権法施行規則第四条の二です。
著作権法施行規則第4条の2 1項 令第七条の二第一号 の文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。 一 図画として法第四十七条の二 (法第八十六条第一項 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に規定する複製を行う場合において、当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが五十平方センチメートル以下であること。 二 デジタル方式により法第四十七条の二 に規定する複製を行う場合において、当該複製により複製される著作物に係る影像を構成する画素数が三万二千四百以下であること。 三 前二号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二 に規定する複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさ又は精度が、同条 に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められること。 2項 令第七条の二第二号 イの文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。 一 デジタル方式により法第四十七条の二 (法第八十六条第三項 において準用する場合を含む。以下この項及び次項において同じ。)に規定する公衆送信を行う場合において、当該公衆送信により送信される著作物に係る影像を構成する画素数が三万二千四百以下であること。 二 前号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二 に規定する公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が、同条 に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められること。 3項 令第七条の二第二号 ロの文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。 一 デジタル方式により法第四十七条の二 に規定する公衆送信を行う場合において、当該公衆送信により送信される著作物に係る影像を構成する画素数が九万以下であること。 二 前号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二 に規定する公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が、同条 に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要と認められる限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致すると認められるものであること。 |
上記著作権法施行規則第4条の2は、第1項と第2項と第3項に分かれ,それぞれ著作権法施行令第7条の2第1号及び第2号イ及びロに対応しています。
つまり,著作権法施行令第4条の2はそれぞれ,第1項において複製の場合を,第2項及び3項において公衆送信の場合を規定していることになります。第1項の複製に関する規定はそれぞれ通常の場合の複製(著作権法施行規則第4条の2第1項1号)とデジタル方式の場合の複製(同条同項2号)とに分かれています。さらに3号が双方の場合について規定しています。
第2項においては公衆送信の場合が規定されています。公衆送信は必ずデジタル方式によることになりますので,アナログ方式の場合の規程は置かれておらず,デジタル方式の複製の場合の制限(著作権法施行規則第4条の2第1項2号)が踏襲されていることになります。
第3項は、著作権法施行令第7条の2第2号ロに対応し,著作権法第二条第一項第二十号の技術保護手段を講じた場合は,画素数を引き上げることが出来ることなどが記されています。
著作権法47条の2と実用品の関係
そもそも実用品は原則的に著作物に該当しないというのが、これまでの判例・通説の立場でした。実用品の保護は意匠法の保護領域であり、著作権法の保護領域と棲み分けていくべきと考えられてきました。しかし、意匠法の保護領域に著作権法の保護が及ばないとする論拠は漠然としており、不合理との批判もありました。
いずれにせよ、実用品については、そもそも著作権が発生せず著作権法47条の2も原則的に関係のない規定でした。
しかし、今年の4月14日にこれまでの考え方を覆すとも評価できる知財高裁判例がだされ、実用品が必ずしも美術の著作物に該当しないわけではないとの判断が下され、一般的には一般商品が著作物に該当する範囲が拡大されたと考えられています。
したがって実用品においても、著作物性を満たす可能性のある商品については、法47条の2の適法化要件を満たしておいたほうが十全であり、かつ、一般商品でも美術の著作物に該当するケースというのは拡大されているということになります。
このことを前提としたうえで実用品のうち著作物性を満たす商品か否かの具体的判断は、専門的判断を必要とする部分になると考えられます。ケースによっては、専門家でも意見が分かれるものもあると考えられます。
平成27年4月14日知財高裁判例については、こちらに解説記事も書いていますので、併せてご参照ください。
平成27年4月14日知財高裁判決を受けて、少なくとも高裁までの下級審レベルでは実用品にも通常の著作物と同様の基準が適用されるケースも多く出てきそうです。※1
つまり、これまで実用品として捉えられていた商品の中にも美術の著作物に該当する商品がでてくるものと考えられます。そうすれば、インターネットオークションなどの実用品の電子商取引についても、商品画像を表示するには著作権法47条の2の適用を受けるべく配慮する必要性も出てくる可能性があります。
また、実用品の中に、美術の著作物ではなく、他の著作物として著作物性が肯定されるものもあるのか、その際、著作権法47条の2が(類推)適用されるのか、不透明な部分も残されています。例えば、実用品に広く美術の著作物該当性が肯定され、著作権法47条の2が適用される状況が発生したとして、模型の著作物(著作権法10条1項6号)だけ同条の適用がないというのも不均衡です。実用品が広く著作権法47条の2の射程に入ったとして,著作物性を肯定される地球儀や機械、建造物模型などだけが同条の適用対象外として商品画像を使用できないという結論には首をかしげざるを得ません。反面学術的な側面で著作物性を肯定される模型の著作物については性質が異なり、商品画像を使用できないとの結論に不合理な部分はないとの指摘なども想定できるところです。
※1)もっとも、現時点で最高裁判所の立ち位置は明確にされておらず、平成26年8月28日に同じ知財高裁でこれまでの考え方を踏襲したともとれる判断が示されており、知財高裁自体が態度を決め兼ねているとも捉えられます。しかしいずれにせよ、現時点でもっとも近い時期に知財高裁がこれまでの考え方を覆すとも取れる判断を示したことから、実用品に対する著作物性肯定の幅は拡がったとみておいた方が無難と考えられます。また、個人的には意匠法との棲み分けの議論において実用品のデザインについてのみ著作物該当性のハードルをあげることは不合理と感じています。学説からの批判も強かった部分であり、今後平成27年4月14日判決は踏襲されていくことになるのではないかと考えています(私見)。
著作権法47条の2とデジタルデータの画素数
著作権法47条の2は、インターネットオークションや、インターネット通販などで商品の写真や表紙などを表示する際に、写真や商品自体が著作物に該当する場合は,著作権侵害が成立してしまうとの指摘について、法的手当を施した規定になります。
著作権法47条の2は、具体的な表示方法については著作権法施行令第7条の2に委任しており,著作権法施行令第7条の2は,著作権法施行規則第4条の2に再委任しています。
著作権法施行規則第4条の2が定める表示方法はデジタルデータについては、画素数で規制をしています。アナログ画像については50cmという実寸で表示制限をしているのに対して、デジタル画像については技術保護手段を施した場合は9万画素、技術保護手段を施していない場合は32400画素と、画素数を用いた制限が規定されています。
著作権法47条の2において、商用サイトに商品画像などを表示する場合に著作権法違反を回避するには、技術保護手段を講じる場合は9万画素(例えば300ピクセル×300ピクセル(正方形の場合))、講じない場合は32400画素(例えば180ピクセル×180ピクセル(正方形の場合))という条件をクリアしなければなりませんでした。
では、この32400画素とは、サーバーにアップロードする画像ファイルの画素数なのか、クライアントコンピューターに表示される画像ファイルの画素数なのでしょうか。
この点、サーバーにアップロードする行為を複製と捉えれば、著作権法施行規則第4条の2第1項を素直に適用すれば、サーバーにアップロードされる画像ファイルがそもそも32400画素という制限を超えてはいけないことになります。
さらに素直に著作権法施行規則第4条の2第2項を読めば、サーバーコンピューターの画像を技術保護手段を講じないでクライアントコンピューターに接続されたディスプレイに表示する際は、クライアントコンピューターに表示された画像データに同条2項の規律が及ぶことになります。したがって、サーバーコンピューター上にアップロードされた32400画素を超えない画像データについて、htmlやcssなどの各種ブラウザ言語を用いて、クライアントコンピューター上に32400画素を超えない範囲で表示させる必要があるものと思料されます。
また、技術的保護手段を講じている場合も、サーバーコンピューター上の複製については同条1項の規律を受けて、サーバーにアップロードする著作物を複製した画像ファイルの画素数は32400画素を超えてはいけないことになりそうです。そのうえでクライアントコンピューター上に、htmlやcssで記述しブラウザにより補正させて9万画素を超えない範囲で拡大表示することが許されるに過ぎないことになりそうです。
もっとも、技術的保護手段を講じている場合にサーバー上にアップロードする画像ファイルが32400画素を超えてはいけないという規律は若干不自然であり、解釈の余地もあるものと思料されます。
上記が、サーバーに32400画素を超えないでアップロードされ、当該画像ファイルを100%の縮尺比率で表示した画像になります。画素数はサーバー上、クライアントコンピューター上ともに31622画素(163×194)です。32400画素を超えない場合の目安にしてください。
画像ファイルの種類や画素数については下記にもまとめています。
著作権法47条の2「複製防止措置」に関するTwitter上での言及はありますか?
Twitter上で弊所弁護士齋藤理央が、下記の言及をしています。
#著作権法47条の2 で、 #美術の著作物 または #写真の著作物 を利用するときに、90000画素で利用するには、 #複製防止措置 が必要になりますが、この複製防止措置が厳密に何を意味するか、はっきりしない側面もあります。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
条文(著作権法施行令第七条の二 第2号ロ)上は、「複製‥を電磁的方法(法第二条第一項第二十号 に規定する電磁的方法をいう。)により防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに送信する方式によるもの」とされています。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
JPEGデータやGIFデータなどの画像データに複製防止プログラムを内蔵させるシステムは、現在開発中か、少なくとも一般的に普及していません。JPEGフォーマットにDRMを実装しようという動きはあるようですが、まだ、特殊な環境でしか利用されていないのではないでしょうか。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
そうすると、画像データのコピープロテクトとは、JAVASCRIPTで指定する右クリック禁止や、透明の画像データを著作物のうえに被せてしまう方法が一般的ですが前者の方法はJAVASCRIPTを含んだHTMLファイルに画像ファイルを埋め込む場合しか効きませんし、後者もCSSなどの制御が及ばないと無効化されます
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
「著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに送信する方式によるもの」これだけ読むと、JPEGなどにコピープロテクトを内蔵する場面を想起するのが素直な気がしますが、現状、一般にはそのような規格は流通していないと理解してます。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
反面、JAVASCRIPTやCSS制御でコピープロテクトする手法は、「著作物とともに送信する方式」という文言には直ちに当てはまってこないような気がしています。どちらかというと、コピープロテクト信号を発するファイルに著作物を埋め込んで使う場合という方が正確です。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
JAVASCRIPTやCSSによる制御は、JPEG画像などとHTMLファイルが基本的には別個に送信されていて、クライアントコンピューターで統合されているという実際を「著作物とともに送信されている」という文言に含ませられるのかという問題が生じます。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
そうすると、90000画素で使えるのは一体どういう場合なんだということになります。
— 齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年1月26日
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