ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

マクドナルドに関連する裁判例

平成18年 2月21日東京地裁判決(平17(ワ)14972号 ・ 平17(ワ)22496号 不正競争行為差止等請求本訴、損害賠償等請求反訴事件)は、日本マクドナルドとのフランチャイズ契約解除を巡って争われた裁判例です。契約解除後の標章の使用が不正競争行為に当たるなどとして標章の使用差止などが請求されました。 

https://i2law.con10ts.com/2019/06/30/%e4%b8%8d%e6%ad%a3%e7%ab%b6%e4%ba%89%e9%98%b2%e6%ad%a2%e6%b3%95%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e6%a5%ad%e5%8b%99/

無形固定資産と営業期間の保障について

裁判所は、「原告は、被告会社との間で、平成8年5月31日、次の各号に掲げる本件店舗における被告会社の固定資産をそれぞれ当該各号に定める価額で同年6月1日をもって売却するとの契約を締結した(甲50)。なお、無形固定資産とは、営業権すなわち得意先又は仕入先関係、営業上の秘訣、販売の機会、経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいうものとされている」として、無形固定資産がフランチャイズの対価に含まれていることを確認しています。
 そのうえで、「本件店舗の無形固定資産は、得意先又は仕入先関係、営業上の秘訣、販売の機会、経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいうものであって、もとより本件契約が契約期間の途中で解除された場合であってもその対価の返還を求められる性質のものではないことが認められる」から、「売買契約は、そもそも本件店舗における一定期間の営業を保証するものではないから、上記無形固定資産の売買代金が本件店舗における一定期間の営業を行う権利の対価であることを前提とする被告会社の主張は、採用することができない」と結論付けました。
 さらに裁判例は、「被告会社は、上記無形固定資産の売買代金が、被告会社において本件店舗の営業を30年間継続する権利の対価であると主張するが、これは、本件契約の期間が投下資本を回収できる30年であることを前提とするものと解される。しかしながら…本件契約の内容によれば、本件契約の期間は10年であり、被告会社に対し、その更新を保証するものではなく、また、原告が、その収益の見込みにつき、何らの保証するものではないことが明記されている。
 そうすると、本件契約の期間は、10年であることが認められ、もとより投下資本が回収されることが約束されていたものではない。その他にこれを覆すに足りる証拠はないから、契約期間が30年であることを前提とする被告会社の主張は、その前提を欠くものである」と判断しています。

契約に関する業務

後の紛争を回避する意味でも、契約内容の確認と修正は重要です。

全店政策に対する裁判所の評価

上記裁判例では、100円マック政策という全フランチャイズで実施された政策が、フライチャイズ加盟店の利益を侵害するものとして債務不履行に当たるとの主張がなされました。

すなわち、「ロイヤルティ料等は、被告会社の営業利益にかかわらず、売上高に応じて算出される。そうすると、営業利益が減少した場合であっても、売上高が増加したときは、ロイヤルティ料等は、増加することになる。このような算出方法を前提として、100円マック政策を実施すれば、被告会社の犠牲の下において、原告のみが利益を得ることになる。他方で、本件契約は、フランチャイザーとフランチャイジーが、フランチャイザーの指導の下に協力して、フランチャイジーによる店舗営業により、ともに利益を享受することをその本質とするものである。そうすると、このような100円マック政策は、一方当事者の犠牲の下に、他方当事者の利益を上げるものであって、本件契約の規定には明記されていないものの、本件契約の趣旨に反するものである。したがって、100円マック政策は、フランチャイズ契約の本質に反するものであるから、本件契約の債務不履行に当たるというべきである」という主張がなされました。

これに対して裁判所は下記のとおり判示して、債務不履行には当たらないとしています。このように全店政策についての裁判所の判断は他の全店舗政策に関する争訟においても参考になります。

「100円マック政策は、3772店舗により全国展開している原告のスケールメリットを生かすために、既存の客以外の新規顧客を広く取り込んで、その顧客をリピータにすることによって、利益を増加させようとするものである。現実にも、原告は、このような政策によって、TC(レジの作動回数をいうものであって、来客店数の目安となるものをいう。以下同じ。)を、前年度と比較して、既存店で月平均12.1%増加させており、また、本件店舗に隣接する4店舗全店(天神ビブレ店、ジークス天神店、薬院駅前店及び天神店をいう。)においては、これ以上の割合でTCを増加させることに成功している(甲51)。
 他方で、被告会社は、100円マック政策にもかかわらず、本件店舗において、TC自体が1.43パーセントの増加に留まっている(甲51)。なお、平成16年における本件店舗の苦情件数(客延べ10万人当たりのものをいう。)は、売上順位1位から10位までの店舗の中で全国第1位であり、その内容は、別紙本件店舗苦情一覧表記載のとおり、品質、サービス及び清潔さ等のいずれにおいても問題があると指摘をするものである(甲51)。
  (2) 上記(1)認定の事実、すなわち〈1〉 本件契約において、被告会社は、原告の営業政策を尊重しこれを遵守しなければならないものとされ、他方で、原告は、これにより収益の見込みについて何ら保証又は約束をするものではないことを内容としていること、〈2〉 100円マック政策は、原告のスケールメリットを生かすために、既存の客以外の新規顧客を広く取り込んで、その顧客をリピータにすることによって、利益を増加させようとするものであり、現実にも、原告は、このような政策によって、TCを増加させ、本件店舗に隣接する4店舗全店においては、これ以上の割合でTCを増加させることに成功していること、〈3〉 しかし、被告会社は、100円マック政策にもかかわらず、本件店舗において、TCの増加がわずかであり、リピーターを増加させるどころか、既存の顧客すら十分に確保できなかったこと、〈4〉 被告会社に対する苦情件数が多いこと、以上の事実に照らせば、仮に、100円マック政策によって、被告会社の利益が減少したとしても、これは、本件店舗の品質、サービス及び清潔さ等本件店舗に固有の問題であって、100円マック政策を採ったことがフランチャイズ契約の本質に反するものと認めるに足りず、本件契約の債務不履行に当たるということはできない」。

不当利得に関する主張

さらに、100円マック政策について裁判所は下記のとおり不当利得の成立も否定しています。

「被告会社は、ロイヤルティ料等の算出方法からすると、100円マック政策が一方当事者の犠牲の下に他方当事者の利益を上げるものであるとして、本件契約の債務不履行に当たると主張する。しかしながら、ロイヤルティ料等は、売上高に比例してこれを算出するものであるから、被告会社の主張する収支計算(乙87)を前提とする場合であっても、売上高が減少している以上、ロイヤルティ料等も同様に減少することになるのであって、原告が一方的に利益を得ていることにはならない。したがって、100円マック政策によって、被告会社の犠牲の下に、原告が利益を上げているという被告会社の主張は、採用できない」。

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

関連記事一覧

弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

お問い合わせ

    TOP