ルール形成とコンテンツ法務

ルール形成(ルールメイキング)戦略とは、この記事では法律を含めたルールを単に遵守するもの、自社の経済活動を規制するものとだけ捉えるのではなく、より経営に有利なルールを形成し、ひいては自身に有利なバックグランドを獲得していこうという発想ないしは戦略をいいます。

例えば、私人が特定の主張に沿ったルールの形成を目指して行う政治活動であるロビイング活動が、一例として挙げられます。

戦略法務とルール形成

戦略法務は経営戦略をよりルールに適合したものにブラッシュアップし、実際の企業経営を通して発生するトラブルとトラブル解決のコストを抑えようとするものです。

ルール形成は、経営戦略が寄るべきルール自体をコントロールしようとする点で、よりダイナミックな戦略法務と捉えることもできます。

あるいは、戦略法務の枠を超えたものととらえるべきかもしれません。

いずれにせよ、ルール形成を通じて経営戦略をより制限が少ない形で構築できるという点で、戦略法務の究極とも評し得ます。

訴訟によるルールメイキング

訴訟は、事実認定と法の適用の過程において、不可避に法令解釈を必要とします。

法令解釈は、法令、つまりルールの形成に近い作用を持つことがあります。

特に法律審として司法の頂点に君臨する最高裁判所の法解釈は、社会的な影響力が大きく、その判断には社会的な注目が集まります。

このように、訴訟にもルール形成作用があるため、実質はルール形成を主要目的とした訴訟も、存在しています。

知的財産権とルール形成

知的財産権もルール形成の有効な分野といえます。

例えば、著作権において映画事業者には特別な権利付与のルールが与えられ、映画事業をより有利にすすめることができます。

また、著作権の保護期間の延長も、海外の強力なコンテンツホルダーの影響が指摘されています。

このように、ルールの形成は、企業活動にポジティブな影響を多分に与えることになります。

コンテンツとルール形成の発想

コンテンツ法務にも、予防法務・戦略法務が重要となります。

そして、トラブルの回避、有利な契約の締結、トラブルの際のより有利な解決などのためにも、ルールを自社に有利に形成することは重要な指標となります。

もっとも、どのようなルール形成が有利かは、自社の立ち位置にもよります。

クリエイトに近い企業・個人事業においては権利の保護を強化するルールメイキングが望まれます。

反対に直接クリエイトにかかわらず、すでに制作されたコンテンツをマネタイズしてビジネスを展開する企業・個人事業者にとっては、権利の帰属・移転を迅速確実にするなどのルールメイキングが望まれることになるでしょう。

アイキャッチ画像(カ=メハメハ大王)

このエントリのアイキャッチはカ=メハメハ1世の像(但、ハワイ島北部に屹立するオリジナルのもの)です。

ハワイの統治者として君臨したカ=メハメハ1世は外交手腕に優れ自身の統治に有利なルールを外国との間で形成していきました。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

『BL同人誌事件判決』

『インターネットと著作権』

『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

『著作権と表現の自由について』

【主な取扱分野】

◆著作権法・著作権訴訟

◆インターネット法

◆知的財産権法

◆損害賠償

◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

【主な担当事件】

『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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