YouTube・インスタグラム投稿動画について動画投稿者を映画監督と同等に評価して著作者と判断した事例<裁判例紹介>[東京地判令和3年10月26日]

東京地判令和3年10月26日・裁判所ウェブサイト掲載は、YouTube動画などについてYouTuber・インスタグラマー(正確にはYouTube投稿者、インスタグラム投稿者)に映画監督に相当する地位を認め著作者と判断した事例です。

動画がコンテンツ業界を席巻している昨今において、SNSをはじめとするデジタル著作権分野において実務上重要な裁判例と思われます。

事案の概要

本件は,原告が,被告らのインターネット接続サービスを介してインターネット 上のウェブサイトに投稿された「本件各記事」に貼付された「本件各画像」は,原告動画の一部を複製したものであるとして,経由プロバイダである被告らに対し発信者情報の開示を求めた事案です。

主要な争点

本件で特に重要な争点は、以下の3点です。

  • 本件各画像の元となっている各動画の著作物性及び原告の著作権の有無(争点1)
  • 複製権及び公衆送信権侵害の有無(争点2)
  • 引用の抗弁の成否(争点3)

本件各画像の元となっている各動画の著作物性及び原告の著作権の有無

裁判所の認定事実

本件で裁判所は概要下記の事実を認定しました。

動画撮影の経緯

動画1

原告は,平成31年11月に退職するまで,名古屋市内のキャバクラ店にお いて「C」の愛称でキャバクラ店の従業員として稼働し,現在は,東京都内でバー 等を経営し,原告チャンネル及び原告インスタグラム上に自身が写った写真,動画等 を投稿していました。

原告は,令和2年10月20日,自宅において,原告が保有するデジタルカ メラを利用して,本件元動画を制作しました。 本件元動画では,原告書籍の内容の紹介として,原告書籍の概要,原告の生い立ち,原告がキャバクラ店で働くこととなった経緯やその当時の原告の思いなどが原告に より語られています。

本件元動画制作後,原告は,本件元動画にテロップ入れ等の加 工をするよう業者に発注し,テロップ,効果音等が付された本件動画1が制作されました。

原告は同月24日,本件動画1を原告チャンネルにアップロードしました。

動画4

原告は,同月26日,本件動画1の一部を切り取って編集した本件動画4に文字 入れ等の加工を施し,原告インスタグラムのインスタストーリーにアップロードしました。

動画2

原告は,令和2年12月1日,飲食店において,原告の運転手に対して原告 がサンドイッチを食べている様子を原告のスマートフォンで撮影するように指示し, 同人において本件動画2が撮影されました。原告は,撮影に際し,自身の配置,ポーズ, アングル,撮影の流れ等を決めてそれを同人に指示し,同人はその指示に従って本 件動画2を撮影しました。また、原告において,本件動画2に文字入れ等の加工を施しています。

動画3

さらに、同年11月18日,原告会社のオフィスにおいて, 原告の夫に対して原告が原告書籍にサインをしている様子を原告のスマートフォン で撮影するように指示し,原告夫において本件動画3が撮影されました。

原告は,動画2と同様に撮影に 際し,自身の配置,ポーズ,アングル,動き,撮影の流れ等を決めてそれを原告夫に指示し,原告夫はその指示に従って本件動画3を撮影しました。また、同様に原告において,本件動画3 に文字入れ等の加工を施しました。

動画5

原告は,同年10月17日,原告が経営するバーの店内において,その店長 に対し,スポーツジムに寄った後の原告の全身を原告の夫のスマートフォンで撮影 するように指示し,同人において本件動画5が撮影されました。原告は,撮影に際し,原告の服装や容姿がわかるよう,自身の配置,ポーズ,アングル,撮影の流れ等を 決めて店長に指示し,店長はその指示に従って本件動画5を撮影しました。また,原告において, 本件動画5に文字入れ等の加工を施しました。

原告は,原告が写る本件動画2,3及び5を原告インスタグラムのインスタ ストーリー上にアップロードしました。

各動画の著作者に関する裁判所の判断

本裁判例は、各動画の著作物性、著作者を判断するにあたり、概ね、著作物性を検討、肯定した上で、各動画を映画の著作物であると認定し、その上で動画(表現)の全体的形成に創作的に寄与した原告をもって著作者であると判断しています。以下、判例の判示を紹介するとともに若干のコメントを付しています。

元動画
元動画の著作物性

本裁判例は、「本件元動画は,原告書籍の出版を広告する目的で,原告書籍の著者である原告自身が,原告の生い立ちを含めた原告がキャバクラ店の従業員として働くこととなっ た経緯,キャバクラ店で働いていた当時の思いなどを語りながら,原告書籍の概要を紹介し,原告において,原告の表情等が表れるように,撮影場所,原告の位置やアングル,ポーズ等を決めて撮影したことが認められる」と述べて前半部分のストーリー構成の点、後半部分の撮影方法の決定を原告自身が行っていると指摘します。

その上で、裁判例は、「このように,本件元動画 は,原告書籍の概要や原告書籍に対する原告の思いなどが臨場感を持って伝わるように,ストーリーや撮影方法に工夫を凝らして制作されたものであって,原告の個性の発揮によりその思想又は感情を創作的に表現したものであり,著作物性が認められる」と述べて、動画内で語られるストーリーや撮影方法(撮影場所やアングルなど)について、創作的に表現したものであると述べています。

ストーリーと指摘している部分については台本の有無などは触れられていませんが、おそらく原告自身が即興で語っているのが明らか、という動画だったのかも知れません。

元動画の映画の著作物該当性

また、本判例は、「本件元動画は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,原告のデジタルカメラのメモリ等に電磁的に記録されて固 定されたものと認められるから,映画の著作物(著作権法2条3項)に該当すると認められる」と述べて、本元動画は、映画の著作物に当たると確認しています。

YouTubeやインスタグラムに投稿される動画が、映画の著作物であると判断されました。固定性についてもデジタルカメラのメモリに保存され固定されていると示しています。ただ、ライブ配信などは配信形態によってはこれに当たらない可能性もあるため、留意が必要かもしれません。

元動画の著作者

そして,本判例は、「映画の著作物の著作者は,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当して その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者であるところ(同法16条),前記認定のとおり,原告が本件元動画のストーリー,被写体,アングル,ポーズ等 を決め,原告において原告書籍の内容等を語り,撮影したものであるから,本件元 動画の全体的形成に創作的に寄与した者は,原告であるといえ,原告がその著作者 として,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認められる」と述べています。

つまり、 本件動画のストーリーや撮影方法には創作性があるところ「原告が本件元動画のストーリー,被写体,アングル,ポーズ等 を決め」ているのだから原告が動画の全体的形成に創作的に寄与していると判断し、原告を著作者であると認定します。

動画1
動画1の著作物性、映画の著作物該当性

本裁判例は、同様に、「本件動画1は,原告の発言の内容を強調するために,上記の本件元動画を動画編 集業者において複製したものにテロップ,効果音等の加工を施して制作されたもの であるから,本件動画1も,本件元動画と同様に,著作物性を有し,映画の著作物 に該当すると認められる」と判断しています。

動画1の著作者

また,本裁判例は、「上記テロップ等は動画編集業者において付したものであるが,テロップは原告が本件元動画で発言している内容を視覚的に明らかにしたものに過ぎず,また, 効果音も聴覚的な加工を部分的に施したに過ぎないものであるから,上記アにおい て認定した本件元動画に係る原告の創作的関与の態様を踏まえると,本件動画1の 全体的形成に創作的に寄与した者は,飽くまで原告であるといえ,原告がその著作 者として,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認められる」と判示しています。

つまり、元動画にテロップを付したとしてもなお、元動画の著作者である原告が動画1の著作者であることを揺るがせないと判示しています。この点は、元動画を元著作物、動画1を2次的著作物と判断したとういうより、一つの動画の制作工程の中間点(元動画)、一応の完成点(動画1)について双方の状態について原告が著作者であると判断したような印象を受けます。デジタル著作権においては時の経過も証拠に残りやすいため、裁判所がこうした判断を示す場面は今後も増えてくるかもしれません。

動画2
動画2の著作物性

本裁判例は、動画2についても、「本件動画2は,原告の運転手が原告のスマートフォンを使用して原告が食事をし ている場面を撮影した動画であるところ,原告が同人に対して原告の配置,ポーズ, アングル,動き,撮影の流れ等の本件動画2の制作に必要な条件を決定・指示して 制作したことが認められる」としています。動画1のようにストーリー性については言及されていないものの、アングルや撮影の流れについて決定して、撮影者である運転手に指示したのは原告であると認定されています。

つまり、裁判例は「本件動画2は,原告の食事の様子や美味 しいと感じた食事の内容を,臨場感を持って伝えられるように,原告の動きや撮影の流れ等を工夫して制作したものであるから,原告の個性の発揮によりその思想や 感情を創作的に表現したものであるといえ,著作物性が認められる」ものであると判示しています。

動画2の映画の著作物該当性

これまでの動画と同様に裁判例は、「本件動画2は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じ させる方法で表現され,原告のスマートフォンに記録されて固定されたものと認め られるから,映画の著作物に該当すると認められる」としています。固定性についてスマートフォンに保存されたことから認められるとしています。

動画2の著作者

そして,裁判例は、「原告が本件動画2における原告の動きや撮影の流れ等を決定し,その決 定したところに従って原告の運転手において撮影したものであるから,本件動画2 の全体的形成に創作的に寄与した者は,原告であるといえ,原告がその著作者とし て,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認められる」と述べて、実際に撮影したのは運転手であるとしても、その撮影の流れや原告の動きなどを決定した原告が動画の全体的創作に寄与しているとして、原告を著作者としました。

つまり演者である原告の動作や、撮影の流れを工夫し、映画でいう映画監督のような役割を担った原告が動画の全体的形成に寄与した者として著作者になると判示しました。

動画3
動画3の著作物性

同様に裁判例は、動画3について、「原告の夫が原告のスマートフォンで原告が原告書籍にサインをし ている様子を撮影した動画であるところ,原告が同人に対して原告の配置,ポーズ, アングル,動き,撮影の流れ等の本件動画3の制作に必要な条件を決定・指示して 制作したことが認められる」と判示しています。

このように,「本件動画3は,原告が原告のオフィスに おいて,原告書籍にサインをしている様子を撮影し,原告書籍の売れ行きや原告書籍に対する原告の思いが伝わるように,被写体である原告や原告書籍の配置,アン グル,撮影の流れ等を工夫して制作したものであるから,原告の個性の発揮により その思想や感情を創作的に表現したものであるといえ,著作物性が認められる」とされています。

動画3の映画の著作物該当性

本件動画2と同様に、「本件動画3は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じ させる方法で表現され,原告のスマートフォンに記録されて固定されたものであることが認められるから,映画の著作物に該当すると認められる」と判示されています。

動画3の著作者

そして,同様に、「原告が本件動画3における原告の動きや位置,原告書籍の配置,アング ル,撮影の流れ等を決定し,その決定したところに従って原告の夫において撮影し たのであるから,本件動画3の全体的形成に創作的に寄与した者は,原告であると いえ,原告がその著作者として,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認 められる」と判示し、撮影方法や撮影の流れを決定し、撮影者である夫に指示した原告が動画の全体的形成に創作的に寄与したとして著作者性を肯定されています。

動画4
動画4の著作物性、映画の著作物該当性

裁判所は「本件動画4は,原告が,本件チャンネルにアップロードした本件動画1の適宜の 部分を抽出して編集した一部を原告インスタグラム上にアップロードした動画であ るから,本件動画1と同様,著作物性が認められ,また,映画の効果に類似する視 覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,スマートフォンに電磁的に記 録されて固定されたものと認められるから,映画の著作物に該当すると認められる」としています。

動画4は、動画1をインスタグラム用に短く編集したものだと思われます。この作業は翻案などに該当し、本件動画4は本件動画1の2次的著作物に該当するように思われますが、原告側の主張の内容によるのか、いずれにせよ原告が著作者であることに変わりはないからなのか、その点は触れられていません。

動画4の著作者

そして,「本件動画4は本件動画1を元にして原告が制作しているものであるから, 本件動画4の全体的形成に創作的に寄与した者も,原告であるといえ,原告がその 著作者として,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認められる」と判示しています。ここは、編集の過程などを単に「制作」と表現していますが、前期の判示部分からすると、「原告が,本件チャンネルにアップロードした本件動画1の適宜の 部分を抽出して編集した」のだと考えられます。

動画5
動画5の著作物性

本件動画5は,「原告が経営するバーの店長が原告の夫のスマートフォンで原告経 営するバーでの原告の全身を撮影した動画であるところ,原告が同人に対して原告 の配置,ポーズ,アングル,動き,撮影の流れ等の本件動画5の制作に必要な条件 を決定・指示して制作したことが認められる」と判示されています。

そして、「このように,本件動画5は,原告が 経営するバーの店内で原告の全身を撮影し,原告が通うジムでの服装や原告の容姿を伝えられるように,原告の動き,アングル,撮影の流れ等を工夫して制作したも のであるから,原告の個性の発揮によりその思想や感情を創作的に表現したもので あるといえ,著作物性が認められる」とされています。

動画5の映画の著作物該当性

本件動画5は,「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚効果を生じさ せる方法で表現されたものと認められ,その映像は原告の夫のスマートフォンに記録されて固定されたものであることが認められるから,映画の著作物に該当すると 認められる」と判示されています。

動画5の著作者

そして,裁判所は、「原告が本件動画5における原告の動き,アングル,撮影の流れ等を決定 し,その決定したところに従って上記店長において撮影したものであるから,本件 動画5の全体的形成に創作的に寄与したのは原告であるといえ,原告がその著作者 として,著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認められる」として同様に撮影方法や撮影の流れを決定し、指示したのは原告であるとして原告を著作者であると認定しています。

著作権侵害の点について

次に、動画の切り抜きを記事として投稿する行為について複製権、公衆送信権の侵害が認められています。

裁判所は、「本件サイトに投稿された本件各記事に貼付されている本件各画像と本件各動画とを対比すると,本件各画像は,本件各動画の一場面と同一のものであること が認められる」と判示し、「 このように,本件各画像は,本件各動画と同一のものであるから,本件各記事の 各投稿者は,それぞれ,被告らが提供するインターネット接続サービスを利用して 本件各動画を含む本件各記事を本件サイト上で作成,投稿することにより,本件各動画を有形的に再製するとともに,インターネットを通じて本件各記事にアクセス した不特定又は多数の者に,本件各画像を含む本件各記事を閲覧できる状態に置い たと認められる」と判示しています。

動画の一部のキャプチャ(切り抜き)が複製権の侵害と判断されているのは注目される点の一つだと思われます。

そして、「これは,著作物の複製・公衆送信行為に当たる」と結論づけています。

引用の成否

被告らの一部は,本件記事1, 4及び5は,本件動画1,4及び5を適用に引用したものであるから,原告の権利 を侵害したことが明らかであるとはいえない旨主張していました。

裁判所は、「引用による利用が適法とされるためには,著作権法32条1項に規定す る要件を満たすことが必要であるから,当該引用の方法や態様が,報道,批評,研 究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであること, かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することを要するものと解するの が相当」と判示しています。

発信者による本件記事の投稿

氏名不詳者により,各「投稿日時」におい て,本件各記事が本件サイトに投稿されました。そして、各記事について裁判所は下記のとおり述べて、各、引用が成立しないと判断しています。

本件記事1

本件記事1には,本件動画1のうち,「実家を取り戻したかったんだよね」 というテロップが表示されている場面を切り出した本件画像1が貼付され,その下 に「うん変わったよ本の宣伝のYouTubeで言っていたw色々と変わるよねw 七分半あたりかな」とのコメントが付されていました。

本件記事1について裁判所は、「前記認定事実(1(1)エ)によれば,本件記事1 は,原告が原告の生い立ちを語りながら原告書籍を宣伝する本件動画1のうち「実家を取り戻したかったんだよね」とのテロップが表示されている場面を切り出した 本件画像1を貼付した上で,「うん変わったよ本の宣伝のYouTubeで言って いたw色々と変わるよねw 七分半あたりかな」とのコメントが付されているもの の,かかるコメントの趣旨は明確とはいえない」と判示しています。

そして、「仮に,かかるコメントの趣旨が原告の発言内容が変遷している旨の指摘・批判をするとともに,本件記事1の投稿者の感想等を述べる点にあるとしても,そのような批判,感想等を述べるために,本 件画像1を掲載する必要性が高いとも認められず,引用目的との関係で権衡がとれ ているものとも評価できない」と述べてコメントおよび切り抜き画像の引用の趣旨が不明瞭である点として、動画を引用した目的との関係で正当な範囲内の引用と言えない点指摘しています。

さらに裁判例は、「加えて,本件画像1は本件記事1の囲み枠の過半を 占めており,独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対し,上記コ メントは短文の比較的小さな文字で掲載されていること,本件画像1の出典を示していないことからすると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通 念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできないし,公正な慣行に 合致すると認めるに足りる証拠もない」と指弾しています。主従関係や、公正な慣行に合致しない点を指摘しているように思われます。

以上ほぼ全ての要件を満たさない点述べて、引用が成立しないと判断しました。

本件記事2及び3

本件記事2には,本件動画2のうち,「食べた瞬間思わず美味しすぎて笑えてもーた(笑)」とのテロップが表示されている場面を切り出した本件画像2が貼付 され,その下に「食べた瞬間思わず美味しすぎて歯茎出た」とのコメントが付されていました。

本件記事3には,本件動画3のうち,原告が原告書籍が山積みにされた机の 前に座ってサインをしている場面を切り出した本件画像3が貼付され,その下に「豚のせいにしてるけど絶対裏ではグル。本買わせるように夫婦でしっかり話し合って るくせに悪質すぎ。」とのコメントが付されていました。

そして、裁判例は、「本件記事2及び3についても,本件画像2及び3を貼付するについて,当該 貼付(引用)の方法や態様が,当該引用目的との関係で,社会通念に照らして合理 的な範囲内のものであること,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致す ることを示す事実を具体的に認めるに足りる証拠はない」として、引用が成立しないと判示しています。

本件記事4

本件記事4は,本件動画4のうち,「努力してる」とのテロップが表示され ている場面を切り出した本件画像4が貼付され,その下には「これ鼻の下何センチ?」 とのコメントが付されていました。

裁判例は、「本件記事4は,本件記事1と同様に,原告がその生い立ちを語りなが ら原告書籍を宣伝する本件動画4のうち「努力してる」とのテロップが表示されている場面を切り出した本件画像4を貼付した上で,「これ鼻の下何センチ?」とのコ メントが付されている」点を指摘します。

そして、裁判例は、「かかるコメントは,原告の容姿について何らかの感想を述 べる意図であるとも考えられなくはないが,上記コメントと本件画像4との関連性 は全く不明といわざるを得ず,原告の容姿に関する感想を述べるに際して,本件画 像4を掲載する必要性は乏しく,引用目的との関係で権衡がとれているものとは評 価できない」として、コメントの意味不明さと相まって適法化できる引用には到底当たらないと述べられています。

加えて,裁判例は、「本件画像4は本件記事4の囲み枠のほぼ全体を占め,上記コメントは短文の比較的小さな文字で掲載されていること,本件画像4の出典につい ての記載がないことからすると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で 社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできないし,公正な 慣行に合致すると認めるに足りる証拠はない」として動画1と同様にほぼ全ての引用成立要件を満たさない点、指摘しています。

本件記事5

本件記事5は,本件動画5のうち,原告の全身が写されている場面を切り出 した本件画像5が貼付され,その下には「投稿の水着写真との脚の長さの違い」と のコメントが付されていました。

裁判例は同様に、「原告の全身を撮影して原告が通うジムでの服装を紹介する場面を切り出した本件画像5を貼付した上で,「投稿の水着写真との脚 の長さの違い」とのコメントが付されている」と指摘し、「かかるコメントは,原告の脚の長さ に言及するものであるものの,その趣旨が明確とはいえず,仮に,原告の容姿に関 する何らかの感想を述べるものであると解したとしても,そのような感想を述べる ために,本件画像5を掲載する必要性が高いともいえず,引用目的との関係で権衡がとれているものとは評価できない」と判示しています。

そして、「本件画像5も,本件画像4と同様に, 本件記事5の囲み枠の大半を占め,上記コメントは短文かつ比較的小さな文字で掲 載されていることをも考慮すると,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係 で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということができず,かつ,公 正な慣行に合致すると認めるに足りる証拠はない」として、画像1、画像4とともにほぼ全ての引用成立要件を否定し、引用の成立を否定しています。

引用に関する結論

裁判所は、「以上によれば,本件各記事に本件各画像をそれぞれ貼付して本件各動画を利用したことについては,適法な引用に当たるとはいえないというべきである」として引用の反論を排斥しています。

デジタル著作権やSNSでの著作権トラブルのご相談は弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)まで

弁護士齋藤理央 iC法務(iC Law)は、SNSをはじめとするインターネットでの著作権トラブルなどデジタル著作権紛争の解決やご相談を承っています。SNS上の無断転載など著作権トラブルでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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    弁護士齋藤理央

    東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
    【経 歴】

    写真(齋藤先生)_edited.jpg

    大阪府豊中市出身

    早稲田大学教育学部卒業

    大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

    2010年    東京弁護士会登録(第63期)

    2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

    2021年    弁理士実務修習修了

    2022年    今井関口法律事務所参画

    【著 作】

    『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

    『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

    『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

    『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

    『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

    『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

    『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

    【セミナー・研修等】

    『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

    『リツイート事件最高裁判決について』

    『BL同人誌事件判決』

    『インターネットと著作権』

    『少額著作権訴訟と裁判所の選択』

    『著作権と表現の自由について』

    【主な取扱分野】

    ◆著作権法・著作権訴訟

    ◆インターネット法

    ◆知的財産権法

    ◆損害賠償

    ◆刑事弁護(知財事犯・サイバー犯罪)

    【主な担当事件】

    『リツイート事件』(最判令和2年7月21日等・民集74巻4号等)

    『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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