メディア

トリプルメディア

企業が情報発信の担い手になる時代

マスメディアの発展により国民が情報の受け手に固定されていた時代は、インターネットの発展により終焉を迎えようとしてます。そして、情報の受け手から送り手になったのは、何も国民だけではありません。企業も今や、自社の管理運営するメディアを通して情報発信するのが当たり前になっています。

コンテンツを配信して、その見返りに宣伝効果を得ることは、コンテンツマーケティングとして今や当たり前の時代になりました。あらゆる企業が情報発信の担い手となり、また、だからこそ、情報と法律の問題と無関係でいられなくなっています。

https://i2law.con10ts.com/2020/06/07/%e6%83%85%e5%a0%b1%e7%99%ba%e4%bf%a1%e3%81%a8%e6%b3%95%e5%be%8b/

トリプルメディアとは

コンテンツマーケティングを配信する場合、トリプルメディア(オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア)の利活用が重要となります。

トリプルメディアとは、オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアと、企業が情報発信するメディアを性質ごとに分類した区分です。

トリプルメディアは、情報の発信者、情報のコントロール者という視点からみると把握しやすいと考えられます。すなわち、自社が発信者であるオウンドメディア、消費者・市民が発信者となるアーンドメディア、他社が発信者となり金銭による対価によって情報が発信されるペイドメディアです。

オウンドメディア

オウンドメディア (owned media)は、文字通り、自身が発信するメディアです。したがって、基本的に発信する情報はすべて、自身のコントロール下にあります。

ここでは、情報の生産から発信に関する法律規制が問題となります。また、情報の生産過程における法的保護、自社に発生する権利を把握していることも重要です。

特に情報の生産過程では著作権法による保護を意識する必要があります。

アーンドメディア

これに対して、アーンドメディア(Earned Media)は、SNSなど自身も情報の発信者になりますが、消費者も同等の情報発信力をもちます。ここでは情報に対する支配力は消費者においても強く、有利な情報を拡散してもらえることもあり、不利な情報が拡散されることもあります(炎上、誹謗中傷など)。このように、アーンドメディアはSNSなど、大多数で形成するメディアです。メディア全体を形成する大多数の消費者による情報発信を、完全にコントロールすることは難しいでしょう。

また、自社に対する正当な批判は有益なフィードバックとしても、違法な情報発信がされた場合は、断固とした法的措置が必要となる場合もあります。

https://i2law.con10ts.com/2018/07/27/%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%83%8d%e3%83%83%e3%83%88%e4%b8%8a%e3%81%ae%e8%aa%b9%e8%ac%97%e4%b8%ad%e5%82%b7%e3%83%bb%e5%90%8d%e8%aa%89%e6%af%80%e6%90%8d/

ペイドメディア

ペイドメディア(Paid Media)は、他者のメディアに広告を掲載してもらうことが一般的であり、メディア自体他者の運営管理する媒体に、文字通り、広告料をペイして掲載権を得ます。情報のコントロール権は他者にあり、またそのことが一般的にも了解されています。

ここでは、契約関係の確認がトラブルを防ぐ意味で広告主、掲載者、広告代理店など全ての当事者にとって重要となりそうです。

SNSにおける自社アカウントの役割

コンテンツマーケティングは、コンテンツを何らかのメディアで配信することになります。

他者の運営管理するコンテンツに広告を掲載する(ペイドメディア)、大多数で形成するコンテンツ(形成の一員としてはオウンドメディア、大多数の形成するコンテンツとしてはペイドメディア(SNS有料広告など))アーンドメディア、自社の制作するコンテンツに広告も掲載(融合)するオウンドメディアをバランスよく状況に応じて活用することが求められています。

また、各メディアごとに発生する法的問題(コンテンツトラブル・契約問題など)も異なります。自社のアピールにコンテンツを利用しようとする場合、戦略段階からリーガルな側面からもアドバイスを得ていくことが望まれます。

TwitterなどのSNSは、アーンドメディア、シェアードメディアという側面がクローズアップされがちです。また、コンテンツ全体としては大多数で形成されるものなので、実際にもアーンドメディア、シェアードメディアという側面がメディア全体の色としては濃いと考えられます。

さらに言えば、面白い点は、SNSにおいては自社アカウントをもっていなくとも自社ブログなどのオウンドメディアにソーシャルボタンを設置する等して、アーンドメディア、シェアードメディアとしてのSNSに関わっていくことも出来るという点です。

その意味で、SNSにおけるアーンドメディア、シェアードメディアの利用の方法は、自社アカウントを開設、使用しなくても実現できる側面があります。

しかしながら、無視できないのがオウンドメディアとしての自社アカウントの存在です。つまり、シェアの火付けとしての自社アカウントです。

すなわち、SNSにおいて、自社アカウントは、アーンドメディアやシェアードメディアそのものというより、アーンドメディアやシェアードメディアとの境界線上のオウンドメディアという特殊な性質を持ったオウンドメディアであると考えられます。

その意味で、ソーシャルボタンの設置されたブログなどのオウンドメディアの延長線にあるものと考えられますが、より、アーンドメディアやシェアードメディアとの境界に近いオウンドメディアという特性を活かしたコンテンツ発信が実現できると理想的といえそうです。

そのとき、例えばブログなどのオウンドメディアの内容を要約したツイートを発信する等まずはオーソドックスな方法から入るのも選択肢であるように思われます。

SNSアカウントの利活用

アーンドメディアで情報拡散!SNSでサービス認知を広げる企業事例【5選】 | PORTFOLIO by amanaimages [ポートフォリオ] https://t.co/f4zOWGyqsm

____#アーンドメディア としての #SNS の利用方法について、具体的な成功事例が紹介されているので、理解が進む記事でした。

— 弁護士齋藤理央 (@b_saitorio) 2018年7月25日

アーンドメディア・シェアードメディアは、他者に情報発信力があるという特徴を有します。したがって、メディア全体としてのコンテンツ形成や、その一部としての情報発信をコントロールすることはできません。コントロールできるのは、SNSでいえば、自身のアカウントなどオウンドメディアの性質をもつ一部のメディア領域です。

オウンドメディアとして

まず、オウンドメディアとしての利用方法が挙げられます。自社のアカウントは完全にオウンドメディアであり、大抵のSNSは無料で利用できるため、費用のかからない拡散性の高いオウンドメディアとしての性質を有します。また、SNSアカウント投稿した内容をセルフキュレーションして、SNS外のオウンドメディアの一部として取り込む、というのも労力などを省略できる側面もあるためお薦めです。

情報拡散の媒体として

SNSのもっともわかりやすい魅力のひとつが情報拡散性です。コンテンツを構築する大多数のユーザーのうち、極一部でも自社のオウンドメディアとしてのSNSアカウント、ブログ、サイトなどを拡散してくれれば、シェアードメディアとして、情報の拡散としては相当の威力を持ちます。

さらに、自社に対する高評価が得られればアーンドメディアとしても、有効となります。

このとき、広告自体を拡散してくれる可能性は高くないでしょうから、拡散の媒介となるのが、SNSアカウントや、SNS外のブログなどのオウンドメディアで展開されるコンテンツ、ということになるでしょう。

またそうした取り組みが評価され好評化につながりアーンドメディア化することが理想的です。

そうすると、SNSで拡散されやすい、有益な情報やおもしろいコンテンツを発信し続けていくことが枢要となりますが、これはコンテンツマーケティング全般に共通する根底ということになりそうです。

まとめ

結局、いろいろな利用方法がある事になりそうです。

ひとつまとめると、自社アカウントというオウンドメディア或いはさらにSNS外のビジネスブログなどのオウンドメディアとリンクして、ひとつの有益なコンテンツを形成する、ということが基本となりそうです。

そのうえで、これを単に告知するか、さらに、告知自体もSNSアカウントで形成される自社コンテンツとして有益なものになれば、望ましい、或いはSNSアカウントでは告知とともに、良い意味で拡散してもらえるようなアクションをとるということになるかと思います。

SNS自社アカウントは、オウンドメディアとアーンドメディア・シェアードメディアの境界であり、その意味で特殊な性質をもったオウンドメディア、ということが言えそうです。身構える必要はありませんが、その性質も理解したオウンドメディアとしてコンテンツ形成、発信をしていけると効果も期待できそうです。

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弁護士齋藤理央

東京弁護士会所属/今井関口法律事務所パートナー 弁護士
【経 歴】

写真(齋藤先生)_edited.jpg

大阪府豊中市出身

早稲田大学教育学部卒業

大阪大学法科大学院修了/最高裁判所司法研修所入所(大阪修習)

2010年    東京弁護士会登録(第63期)

2012年    西東京さいとう法律事務所(I2練馬斉藤法律事務所)開設

2021年    弁理士実務修習修了

2022年    今井関口法律事務所参画

【著 作】

『クリエイター必携ネットの権利トラブル解決の極意』(監修・秀和システム)

『マンガまるわかり著作権』(執筆・新星出版社)

『インラインリンクと著作権法上の論点』(執筆・法律実務研究35)

『コロナ下における米国プロバイダに対する発信者情報開示』(執筆・法律実務研究37)

『ファッションロー(オンデマンド生産と法的問題点)』(執筆・発明Theinvention118(6))

『スポーツ大会とスポーツウエアの法的論点』(執筆・発明Theinvention119(1))

『スポーツ大会にみるマーケティングと知的財産権保護の境界』(執筆・発明Theinvention119(2))

【セミナー・研修等】

『企業や商品等のロゴマーク、デザインと法的留意点』

『リツイート事件最高裁判決について』

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『写真トリミング事件』(知財高判令和元年12月26日・金融商事判例1591号)

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